読書日記 2008年

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中国を追われたウイグル人 水谷尚子 文春新書 ★★★★★

──絶句。恐怖。戦慄。人は、ここまで残酷になれるものなのだろうか。ここに書かれていることの衝撃は、どんな予想をも遙かに超えている。とにかく、一人でも多くの人に読んで欲しい。本書を世に顕した著者の勇気に、敬意を表する。

デモに参加しただけで投獄され、血も凍る数々の拷問を受ける・・・。これが、今まさに隣の国で行われていることなのだ。そして、ウイグル自治区は中国の核実験場である。シルクロードの民、ウイグル人の住む地域はいつか訪れてみたい憧れの地であった。しかし、ローカルバスに揺られて新疆を旅しているとき、昼間なのに突然ピカッと閃光を感じ、見渡すと乗客全員が鼻血を出していた、などという日本人旅行者の証言を聞くと・・・。

中国の抱える二つの爆弾、ウイグルとチベット。折しも、チベットで暴動が発生した。チベットには行ったことがあり、大変心を痛めている。彼らの身にも、ここに書かれていたようなことが起きているのだろうか。オリンピックを目前に、何かとんでもないことが起きそうな、不穏な感じがする・・・。

しかし一方で、著者はおわりに次のように述べることも忘れない。

 今筆者は、ウイグル問題を日本社会に伝える難しさを、ひしひしと噛みしめている。
 これまで筆者のレポートに関しては、「保守派」「愛国者」を自認する方々から特に強い関心を示していただいた。ただ気になっているのは、この問題が「敵の敵は友」的な発想から「中国を叩くための材料」として扱われる事も少なくないことである。
 (中略)自分たちの内輪の中で流通する「情報」によって「事実」を裁断するかのような現象は、まるで中国の「反日団体」に所属する憤青たちがよりどころとしている「日本知識」と、現実の日本とのギャップを彷彿とさせる感がある。

(08/03/23 読了)

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