ナバホへの旅 たましいの風景 河合隼雄 朝日文庫 ★★☆☆☆
ナバホ語は、現在でも15万人近い話者がいて、北米先住民言語の中で最も保存状態がよい。グランド・キャニオンで一度ナバホの人にお会いしたことがあるが、かねてから是非、Navajo Nationを訪れてみたいと思っていた。
ユング派分析家の大家という、精神医学界では異端の(?)肩書きをもつ著者が、ナバホの世界に辛うじて生き残っているシャーマニズムを執り行うメディスンマン(ナバホ語の言葉はないのだろうか?)を訪ねる話。企画としては面白いと思う。
しかし、この本は期待外れであった。
第一に、構成が粗雑である。文章の纏まりがなく、雑駁な印象しかない。
第二に、分析が皮相的である。わずかな事例を挙げて、日本は、欧米は、あるいは、キリスト教文化圏は、などとすぐに一般化したがるのは如何なものか。
第三に、著者は北米先住民のことをほとんど知らない。1928年のお生まれなので、青年時代の娯楽といえばアメリカの「西部劇」。残忍で暴虐、知性のかけらもない「インディアン」が白人の「英雄」にやっつけられる話である。著者はそうやって刷り込まれた偏見から出発しているが、大部分の読者にとっては、かつてそういうものが存在していたことの方がむしろ驚きなのではないか。(09/01/15 読了)