ヒマラヤを駆け抜けた男 佐瀬稔 中公文庫 ★★★☆☆
かつて、山田昇というタフな登山家がいた。
地球上に8000メートル峰は14座ある。山田昇は、Reinhold Messner、Jerzy Kukuczkaに次ぐ3人目の14座完登者になるはずだった。だが、1989年、9座まで登頂したところで、厳冬期のマッキンリーで遭難死してしまう。植村直己が、やはり厳冬期のマッキンリーで遭難死してから5年後のことである。
ちなみに、2009年現在、14座完登者は15人もいるらしい(そのうち3人は韓国人である)。日本人の最高は、竹内洋岳の11座である。
国家的プロジェクトとしてヒマラヤに隊員を送り込んだ日本山岳会は、大学山岳部OBを中心とした、いわばエリート集団であった。それに激しく対抗心を燃やした「町の山岳会」の中から、仕事よりも山を取るような先鋭的なアルピニストが生まれてきた。この本は、そういう時代の雰囲気を知るには良い。
しかし、ノンフィクションとしては、構成が悪い。登場人物や時代が錯綜していて分かりにくい。(09/04/12 読了)