ひらがなでよめばわかる日本語 中西進 新潮文庫 ★★★★☆
日本語は、同じ音の言葉を漢字で書き分けることで意味の違いを表現するという、世界でも類い稀な奇怪な表記法を採用している。これは日本語の長所だと思っていた。
でも、著者に、いや柳田国男に言わせると、どういう漢字を書くのかをつい気にしてしまうことを「どんな字病」というのだとか。
漢字をわすれて、ひらがなでかいてみると、このくににすんでいた古代人のこころがみえてくる。
目と芽(め)/鼻と花と端(はな)/耳(みみ)と実(み)/歯と葉(は)/頬(ほほ)と穂(ほ) は全て同じことば 爪と詰め(つめ)/血(ち)と父(ちち)と命(いのち)の「ち」/毛(け)と気配(けはひ)の「け」と物の怪(もののけ)の「け」/息(いき)と生きる(いく)と命の「い」 は語源が同じ 盛り(さかり)、幸い(さきはひ)、岬(みさき)、咲く(さく)、酒(さけ)は語源が同じ 輝く(かがやく)、鏡(かがみ)、陽炎(かぎろひ)、影(かげ)は語源が同じ 春(はる)、張る・貼る(はる)、晴れる・腫れる(はる)、原(はら)、祓う(はらふ)は語源が同じ 秋(あき)、飽きる(あく)、開ける・空ける・明ける(あける)、諦める(あきらめる)は語源が同じ 雷(かみなり)は「神鳴り」。稲妻は稲の妻(夫の意味)、つまり「実りを豊かにするもの」という意味(放電によって空中の窒素が固定されるため、農作物がよく実る) アイヌ語のカムイは神=熊の意味。韓国語の곰(kom、熊の意味)=日本語の熊(くま)=神(かみ)? 仏(ホトケ)はブツが変化した言葉(ブツ+物の怪の「け」)で、やまとことばではない 舞う(まふ)は回る(まはる)と同語源で円運動を、踊る(をどる)は上下運動を表す 咎(とが)、尖る(とがる)、研ぐ(とぐ)、棘(とげ)は同語源、罪(つみ)、積む・摘む(つむ)、紡ぐ(つむぐ)も同語源 結ぶ(むすぶ)、蒸す(むす)、娘(むすめ)、息子(むすこ)は同語源 知る(しる)、著しい(いちじるし)、記す・印す(しるす)、道標の「しるべ」、白(しろ)は同語源 梅(ウメ)、麦(ムギ)、紙(カミ)、文(フミ)、筆(フデ)はそれぞれバイ、バク、カン(簡)、ブン、ヒツが訛ったことばで、やまとことばではない 日(ひ)と火(ひ)、恋(こひ)と乞い(こひ)、神(かみ)と上(かみ)は発音が違う
などなど、実に目からウロコな話が続出して、大変に面白い。(10/09/24読了)