読書日記 2019年

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進化とは何か リチャード・ドーキンス ハヤカワ文庫 ★★★☆☆

口絵の写真はとても若く見えるが、このレクチャーが行われたのは1991年だから、ドーキンス50歳のときのもの。ドーキンス博士だったら進化をどう教えるのか・・・ということを知る上では参考になった。

第1章 宇宙で目を覚ます:進化のタイムスケールについて。
第2章 デザインされた物と「デザイノイド」物体:デザイノイドとは、あたかも神によってデザインされたかのように見える物体(=生物)のこと。それは自然淘汰によって可能であることを説く。
第3章 「不可能な山」に登る:1%だけ完成した眼でも、ないよりはまし。進化の途中経過でも自然淘汰にかかりうるという話。
第4章 紫外線の庭:生物とは「遺伝子の乗り物」である、という『利己的な遺伝子』の話。
第5章 「目的」の創造:脳の進化について。

ドーキンスのライフワークでもあるのだが、全体的なメッセージは「反・創造説」で貫かれている。
進化を実感するのは難しいし、実験して見せることもできない。そのため、シュミレーションの結果を示しているのだが、あまり説得力のある議論には思えなかった。
遺伝子やゲノムの話はほとんど出てこないが、これは1991年という時代を考えれば致し方ないのだろうか。
生き物についてのトリビア的な話はあまりなかった。おおっと思ったのは、ニコ・ティンバーゲンのジガバチの実験くらいか。

ドーキンスには膨大な著作があるので、そのブックガイドとしては有用だろう。
しかし、今さらこれを翻訳するくらいなら、ドーキンス自身が「最も気に入っている本」と言っている「「不可能な山」に登る」("Climbing Mount Improbable")をまず翻訳すべきなのではないだろうか。(19/09/02読了 19/09/16更新)

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