読書日記 2021年

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ふしぎの植物学 田中修 中公新書 ★★★☆☆

とても読み易いが、2003年出版なので少々古いことは否めない。
ゲノムや遺伝子の話はほとんど出てこず、古典的なバイオロジーの話。だが、植物学の知識が中学校以来アップデートされていない私にとっては、むしろちょうど良かった。気孔とか、蒸散とかいう言葉を聞いたのは何年ぶりだろうか。

ダイズとトウモロコシの鉢植えを一緒に、密閉したガラス容器に入れて、水と養分を充分に与え、一日中光を当て続ける。すると、トウモロコシはすくすくと育つのに、ダイズは枯れてしまう。なぜだろうか?
C3, C4, CAM(Crassulacean Acid Metabolism、ベンケイソウ型有機酸代謝)植物の話は興味深い。本書では触れられていないが、二酸化炭素を効率よく固定するためのメカニズム(C4およびCAM)は、植物の進化の過程で60回以上も独立に出現しているという。動物界におけるカメラ眼のような、収斂進化の代表例なのだ。
なお、「C3植物はPEPカルボキシラーゼを持たないために、二酸化炭素をすみやかに取り込めない」(P. 93)とあるが、実際にはC3植物にもPEPカルボキシラーゼはある。

「チューリップの球根の中には蕾がある」「二十世紀梨は13歳の少年がゴミ捨て場で発見した」「日本全国にあるソメイヨシノはすべて1本の木に由来するクローン」など、蘊蓄も多数。この著者は、植物についての蘊蓄本を多数執筆しているので、他の本も読んでみよう。(21/06/12読了 21/06/16更新)

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