下山の哲学 ★★★☆☆ 竹内洋岳 太郎次郎社エディタス
とても読みやすいので一気に読めるが、竹内さんの著書はこれまでに何冊か読んだので、どこかで聞いたことのあるような話がほとんどだった。
8000m峰でなくとも、「頂上は登山のゴールでも折り返し点でもない」というのはよくわかる。確かに、登頂した時に一時的にテンションは上がるが、登山という物語が完結するのは安全地帯に降り立ったときだ。
「次に登る山を見つけるために登山をする」というのもとてもよくわかる。これは、「なぜ山に登るのか」という古典的な問いに対する、気の利いた答えかもしれない。
この本を読んで感じるのは、人生の短さだ。このくらいのペースでやらないと8000m峰14座完登は成し遂げられないし、成し遂げたとしてもその先──例えば、50座以上ある7500m峰全山登頂──は難しい(そのうち達成する人が現れるかもしれないが)。
筆者は私と同世代。私も一歩間違えれば、局地法を体験した最後の世代として、ヒマラヤに遠征していたかもしれない。(22/08/01読了 22/09/18更新)