2002年 30冊
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「ニューヨーク散歩〜街道をゆく39〜」 | 司馬遼太郎 | 朝日文庫 | ★★ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「Maya - for Travelers and Students」 |
Gary Bevington |
University of Texas Press |
★★ |
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「アメリカ黒人の歴史」 |
本田創造 |
岩波新書 |
★★☆ |
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「0歳児がことばを獲得するとき」 |
正高信男 |
中公新書 |
★☆ |
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「ニューヨーク」 |
亀井俊介 |
岩波新書 |
★★☆ |
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ニューヨークの街は南から北へと発展していった。マンハッタン島の南端にあるウォール街は、まだここがニューアムステルダムとよばれていた頃、オランダ人がイギリス人の攻撃を避けるためにここに防壁(ウォール)を築いたことに由来している。つまり、ニューヨークはウォール街の南側の僅かな領域から出発したわけだ。マンハッタン島の北半分は、都市計画に基づいて開発されたため無機的な格子模様になっているが、その中をブロードウェイだけがうねりながら斜めに延びている。それはなぜかというと、この道は開発以前から存在していたからだ。これは、先住民の踏み跡(トレイル)だったのである。 どんなガイドブックよりも詳しいけれど、著者の深遠な思想などどこにもなくて、これはやっぱり観光ガイドなのだ。今度ニューヨークに行ったら、マンハッタン島を南から、歴史を辿りながら歩いてみようと思う。('02.10.27) 「チンパンジーの心」 |
松沢哲郎 |
岩波現代文庫 |
★★☆ |
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特に面白いのは、第3章「認識の発達をくらべる」である。例えば、チンパンジーに紙と鉛筆を与えると、お絵描きを始める。積み木を与えると、何も教えていなくても、ちゃんと角を揃えて高く積もうとする。同じことをニホンザルにさせようとしても、少し囓ってみて食べられないと分かるとあとは見向きもしない。だから、まぁ実際そうなのだが、チンパンジーはサルよりヒトに近いというわけだ。その他、まだ寝返りのうてない赤ちゃんは顔にかけられたハンカチを取り去ることができないとか、「つかむ」から「つまむ」への発達とか、「入れ分け」のパターンの変化とか、(ヒトの)赤ちゃんの認識の発達というのも私にとっては非常に興味深い話題である。なんせ、今は目の前に格好の実験材料がいるからねぇ(現在5ヶ月)。 第4章「言葉を覚えたチンパンジー」は本書のメインであるが、色んなところで何度か読んだり聞いたりしたことがある。チンパンジーの色彩の命名の話は面白いが、それ以前に、基本語に含まれる色彩が人類で普遍的だというのは興味深い。例えば、シアンやマゼンタのような微妙な色を基本色だと思い、赤や青をその混色とみなすような言語は存在しなさそうなところを見ると、色彩の認識もgenomicに規定されているということだろうか。 ネアンデルタール人(ヒトとは異なる種である)が死滅せずに今日まで生き長らえていたら、さぞかし楽しいことになっていたに違いない。('02.10.12) 「ソロモンの指環」 |
Konrad Z. Lorenz |
ハヤカワ文庫 |
★★★ |
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旧約聖書に出てくるソロモン王は、魔法の指環をはめてけものや鳥や魚と語ったという。コンラート・ローレンツは、そんなものはなくてもハイイロガン語やコクマルガラス語を操ることができたのだから、ソロモンより賢かったという訳か。それにしても、人間がこんなにも鳥と心を通わせることができるというのは驚きであり、感動的でもある。この本も歴史に残る名著の一つといえるだろう。('02.9.28) 「暗号攻防史」 |
Rudolf Kippenhahn |
文春文庫 |
★★ |
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日本語に飢えないように大量の本を空輸しておいたのだが、これがアメリカ亡命(留学ともいう)後に読んだ第1号。('02.9.14) 「二重らせんの私」 |
柳澤桂子 |
ハヤカワ文庫 |
★★☆ |
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筆者はいう。「お金がからんできたために、生命科学の様相は一変してしまった。あのコロンビア大学の教授たちのもっていた、豊かな水をたたえた大河のような雰囲気は失われた。研究者は手に手にDNAの入った試験管をもって、何かに追い立てられるように全速力で走りだした。いったいどこへいこうというのであろうか。 「困ります、ファインマンさん」 |
Richard P. Feynman, Ralph Leighton |
岩波現代文庫 |
★★ |
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「ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)(下)」 |
Richard P. Feynman with Ralph Leighton |
岩波現代文庫 |
★★★ |
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20代前半にしてマンハッタン計画で原爆の製造に荷担。本職の物理学以外でも、絵を習わせれば個展を開くほどの腕前にまで上達し、プロのダンサーの伴奏者としてドラムをたたき、マヤの象形文字を解読するというあんばいで、一人の人間が、こんなに密度の濃い人生を生きられるものかと驚嘆する。 ただこの本、どうも話がうまく出来過ぎている気がしないでもない。例えば、日本人のそろばん売りが3乗根の問題を出題するのに、でたらめに選んだ数字が"1729.03"だったというのはとても考えられないことだ。そう思って、「困ります、ファインマンさん」の立花隆による解説を読んでみると、なるほど「ノーベル賞受賞者の自伝」というのはウソで(岩波現代文庫版ではこの文字は消されている)、Feynmanが面白おかしく喋った小話をLeightonがまとめたものだった。だから実際には、誇張(ホラ)も含まれているのだろうと思う。('02.7.30) 「木炭日和 〜'99年版ベスト・エッセイ集〜」 |
日本エッセイスト・クラブ編 |
文春文庫 |
★☆ |
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「キッチン」 |
吉本ばなな |
角川文庫 |
★★☆ |
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夏になると、「名作」と呼ばれる小説を読んでみたくなるのはなぜだろう?('02.7.11) 「ひとが否定されないルール」 |
日木流奈 |
講談社 |
★★☆ |
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ひとが否定されないルールとは、決して評価しないこと、強制しないこと。ただ自分と他人とは違うのだということを受け入れ、対話をすること。まったく、宗教書を読んでいるみたいだった。('02.7.10) 「南イタリアへ!」 |
陣内秀信 |
講談社現代新書 |
★★ |
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「史上最大の発明 アルゴリズム」 |
David Berlinski |
早川書房 |
★ |
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「はじめてのイタリア語」 |
郡史郎 |
講談社現代新書 |
★★ |
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この本はコンパクトにまとまっていて、言語のあらましを知るには良い。文法の知識はこの程度で充分だろう。cappuccino(カプチーノ)と日本語の合羽(かっぱ)は語源が同じ、などなど、読み物としても面白い。('02.4.20) 「日の名残り」 |
Kazuo Ishiguro |
早川書房 |
★★ |
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「世界遺産・極める55」 |
世界遺産を旅する会 編 |
小学館文庫 |
★☆ |
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「私は赤ちゃん」 |
松田道雄 |
岩波新書 |
★★ |
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「男だって子育て」 |
広岡守穂 |
岩波新書 |
★★☆ |
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「アメリカ感情旅行」 |
安岡章太郎 |
岩波新書 |
★★☆ |
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実に滑稽なほど憂鬱な留学記であり、一体この人は何をしにアメリカくんだりまで行ったんだろうと思ってしまう。最後に、「彼等もわれわれと同じ人間なのだ」という当然過ぎる結論にやっと到達する。そのことがまさに、25歳で敗戦を迎えた男にとって、当時のアメリカに対する劣等感がいかに大きかったかを示している。それは現代の感覚からはとても想像しがたいものであり、貴重な記録だといえる。('02.2.11) 「物語 アメリカの歴史」 |
猿谷要 |
中公新書 |
★★ |
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19世紀の後半になるとアメリカは外部に膨張し始め、世界史的な意義をもつようになる。なぜか?アメリカ内部に、フロンティアが消滅したからである。言い換えると、組織的な抵抗が不可能なレベルにまで、先住民族は殺戮され尽くしたのだ。19世紀の終わり頃まで、アメリカの内部に先住民族の国家が存在していたことを知る人は少ないだろう(私も、この本を読むまで知らなかった)。いまやアメリカ国内の先住民族は人口の1%にも満たない。 イギリス本国、先住民、黒人、日系人、日本、ソ連、ベトナム、イラク、そしてアフガニスタン。まことにこのアメリカという存在は、自ら敵を作りあげることによって持ちこたえてきたように見える。結束を保つためには、共通の敵をもたなければならないのだろうか?だが、こんなやり方がいつまで続けられるというのだ?('02.2.3) 「英語の感覚(上)(下)」 |
大津栄一郎 |
岩波新書 |
★ |
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I like teaching English.とI like to teach English.の違いなど、ピンポイント的になるほどと思える箇所もあったのだが、全体を通読するのが億劫で、面白い部分が埋もれてしまっているのが残念。('02.1.27) 「落ちこぼれてエベレスト」 |
野口健 |
集英社 |
★★☆ |
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そう。今更、シェルパの命を下敷きにしてヒマラヤの高峰に登ったところで、偉くも何ともないのだ。だからこそ、彼のやっている清掃登山は価値があるのだ。そのことに関しては、この本ではほとんど触れられていないが。 “いつも背伸びをしていれば、いつかは背が伸びる”というラマルキズム的(?)なキャッチフレーズも私は好きだ。('02.1.26) 「インストール」 |
綿矢りさ |
河出書房新社 |
★★☆ |
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「アメリカ素描」 |
司馬遼太郎 |
新潮文庫 |
★★ |
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私はアメリカが嫌いだけど、そういう政治的なことはさておいて、なるほどアメリカは「さまざまな人種が、オデンのようにそれぞれ固有の味と形を残したまま一ツ鍋の中に入っている」から面白いのだろう。少うし、この人工国家の正体を探ってみようかナという気になってきた。('02.1.19) 「ひろさちやの般若心経88講」 |
ひろさちや |
新潮文庫 |
★★ |
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色即是空。すべて、事物は「空」である。 こだわるな。こだわるな。こだわるな、ということにもこだわるな‥‥。 こういう心境に達すれば、きっと心に平安が訪れるのだろう。まったく、どこぞの国の大統領にでも煎じて飲ませてやりたいものだ。とはいえ、大乗仏教は競争というものを否定する(じゃなくて、こだわらない)。とすると、「努力」とか、「発展」とかいうものにも価値を見出さないのだろうか?('02.1.12) |