Home > 世界中の山に登りたい! > 霧島連峰縦走 韓国岳〜新燃岳〜高千穂峰

それぞれの山はむしろファミリー向けかもしれないが、全てを一度に登ろうとするとかなりキツい。
霧島は火山であり、月面のクレーターのように多数の噴火口がボコボコと口を開けていて、中部山岳あたりとは全く違った不思議な光景が広がっている。坂本龍馬がおりょうと一緒に日本人として初めて新婚旅行に訪れたのも、ここ霧島であったという。

諸事情により熊本をベースキャンプにせざるを得なかったため、朝4時20分に起床。
レンタ・カーで熊本ICから九州自動車道を南下して、小林ICで下りる。
えびの高原、「韓国岳登山口」のバス停に車を停めてスタート。ここは「賽ノ河原」と呼ばれており、ところどころ黄色い噴煙が上がっていて、硫黄の臭いが鼻を突く。えびの高原は既に標高が1250mもあって、ここから霧島連峰の最高峰、標高1700mの韓国岳(「からくにだけ」と読む)の山頂まで僅か1時間であっさりと到着してしまう。

天気は非常に良かった。まず何といっても、進行方向の遙か遠方に、朝日を浴びて幻想的なシルエットを浮かび上がらせた高千穂峰が神々しく聳えている。本当に今日中にあそこまで辿り着けるのだろうか?
南側には、非常に対称性の高い美しい円に縁取られた大浪池が満面と水を湛え、その後方には桜島が鎮座している。
初めて見る九州の山並みはしかし、山岳重畳というにはほど遠く、陸地からところどころピークが島のように顔を出しているという按配であった。
北側には雲仙普賢岳が見えているらしく、こんなによく見える日は珍しいと、自称「この山の主」が興奮気味に話していた。それ以外にも、高隈山、市房山、あるいは久住や祖母も見えていたのかもしれないが、よく分からない(開聞岳、宮ノ浦岳、阿蘇山は見えなかったらしい)。

朝靄の高千穂峰と新燃岳(韓国岳山頂より)

大浪池(遠方にかすかに見えるのは桜島)

新燃岳(しんもえだけ)方面へ向けて縦走を開始する。
急激に標高を下げ、一面のすすきの原をずんずん歩いていくと獅子戸岳(1429m)に着く。
登り返して新燃岳の火口の縁に出ると、エメラルド・グリーンの美しい火口湖が見え、噴煙が上がっていて再び硫黄の臭いが漂ってくる。この山は昭和34年の大噴火でできた新しい山であるという。
そこから火口の縁を半周ほどして、新燃岳の頂上(1421m)に到着。

新燃岳の火口湖

新燃岳山頂より韓国岳

新燃岳山頂より高千穂峰

歩き始めが予定より遅れていたので、ゆっくりと休む間もなく焦って出発する。
中岳(1332m)に着くと急に賑やかになる。広々とした高原になっていて、家族連れが多くて平和な雰囲気である。目の前には、圧倒的な大きさで高千穂峰が聳えている。これから、あれに登るのか・・・。
だが、コースタイムよりだいぶ速く歩いて来たので、ここへ来て漸く心のゆとりを取り戻した。ぽかぽかと暖かいので、高千穂を眺めながらしばし横になる。防寒具をたくさん持ってきたのに、長袖のシャツ一枚で充分な暖かさだった。

中岳から高千穂河原までは、ずっと石畳の道が整備されていた。道理で家族連れが多いはずだ。しかし、爪先が痛くなり始めた脚にはむしろこの石畳は恨めしかった。
高千穂河原には広大な駐車場があり、一大観光地の様相を呈している。ここは標高約970mで、縦走というよりもう一度登り直さなければならない。さぁ、いよいよ最終目的地、天孫降臨の山・高千穂峰に向けて出発だ!

登山道の途中に、霧島古宮址という、噴火で消失したという神社の跡がある。不思議なことに、このアングルから見ると、鳥居をちょうど中心として左右相称に双耳的に高千穂峰が臨まれるのである。

霧島古宮址

高千穂への登りはけっこうつらい。富士山と同じく、火山岩でガラガラになっていて歩きにくく、2歩前進1歩後退という感じである。
今から登り始める人が沢山いるので安心する。
急斜面を喘ぎながら登っていくと、およそ真似のできない強烈な鹿児島アクセントで機関銃のように喋りまくる地元の女子高生の集団に出くわす。その集団を追い越すと俄然脚が軽くなるが、それも一瞬しか続かなかった。

御鉢に到着。ここはまた巨大な噴火口の縁であり、ダイナミックな景観が広がっている。
「馬の背」と呼ばれる火口縁の先に、最後のキツ〜イ登りが控えている。
落石が多発しそうなガレた道を登り切ると、そこが高千穂の頂であった。
流石に疲れた。しばし膝に顔を埋めて踞っていた。
山頂には、「天の逆鉾」と呼ばれる謎の物体が突き刺さっている。ガイド・ブックによると、日の丸の旗がへんぽんと翻っている筈であったが、旗を掲げる竿はあったけれど肝心の旗がなかった。
周りの景色は霞んでいてよく見えないが、韓国岳をはじめ縦走してきた山々が臨まれる。ホント、よくぞ歩いたものだ。
高千穂峰は、神話に彩られた古代のロマン漂う山であると同時に、初日の出を見るために夜中に行列をつくって登られるような、庶民的な山でもあった。

高千穂峰山頂の天の逆鉾

下りは元来た道を引き返す。これまた富士山の砂走りの要領で斜面を駆け下りる。
15時40分、無事に高千穂河原に下山。歩き始めてから8時間以上経っていた。標高の低い山でも、このように長大なコースを歩くことによって大いなる充実感が得られるのだ。
高千穂河原にあるビジターセンターで今辿ってきたルートを反芻したのち、タクシーでえびの高原に戻る。
白鳥温泉という運転手お薦めの温泉に浸り、居眠りしそうになりながら熊本に帰った。

翌日は阿蘇山に登頂する予定だったが、身体中が痛かったし、昨日で充分満足していたので、車でフツーに観光した。阿蘇は箱根を巨大にしたみたいだったけど、そのうち阿蘇五岳全山縦走でもやってやるさ思いつつ、火の国・九州を後にしたのだった。

(おまけ)熊本城

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