Home > 世界中の山に登りたい! > 三ツ峠山

予定日を過ぎても一向に産まれる気配がないので、期せずしてもう一度山に行けることになった。
おそらく三島における最後の山行となるであろう今回行き先として選んだのは、河口湖の北東に位置する三ツ峠山である。
かつて関東では富士に次ぐ霊山として崇められたこの山は、登ってみると、なるほど今日では富士に次いで通俗的な山であるらしかった。

御殿場から138号を北上して東富士五湖道路に入るというお決まりのコースを辿って、富士吉田ICで下りる。
富士急行の線路沿いにしばらく東へ進み、三つ峠駅近くの適当な施設の駐車場に車を停める。もっとずっと奥まで車で入れるのだが、再びここに戻って来なければならないのと、昔ながらの表登山道を忠実に辿るという理由により、ここから車道をテクテクと歩き始めることにする。結果的にはこれが正解だった。
8時スタート。

これが三ツ峠山

しばらくして山道に入ると、すぐに最初のチェックポイント・達磨石に到着(8時50分)。
ここからはグングン坂道を登っていく。朝方にはまだ昨日の雨が残っていたけれど、今や頭上に青空が広がっている。緑が濃い。
前回入山したとき山はまだ冬の装いだったのに、いつしか春を通り越して初夏になっていた。フリースを持ってきたのに、Tシャツ1枚でも暑いくらいだ。
「股のぞき」というスポットに着くと、突如目の前に富士山が現れた。このルートが昔からよく歩かれていたことを示すように、これ以降、富士山が見える地点ごとに大曲り・馬返し・愛染明王といった呼称が与えられている。
「八十八大師」には80体あまりのお地蔵様が鎮座していて、かつての信仰の篤さを物語っている。
落石多発地帯を通過すると、やがて登山道は屏風岩の直下を通る。ここはロック・クライミングのゲレンデになっていて、岩には無数のハーケンが打ち込まれており、事実クライミングに興じている人が約2名ほどいた。登山者とクライマーというのは一般人から見ればほとんど区別がつかないかもしれないが、実は違う世界に属している存在らしく、決して言葉を交わすことはなかった。
富士見山荘に着くと急に賑やかになった。どうやら西側から最短コースで登ってきた連中とこの辺りで合流するらしい。目指すゴールは、地肌の露出した急斜面を登り切ったところにある。
しかし!前方にはテレビ用のアンテナらしき巨大な建造物が林立しており、ガックリと肩の力が抜ける。

アンテナの林立する山頂付近

11時15分、3時間以上かかってやっと頂上に到達。
ここは富士山を見るために訪れるような山なので、何といっても圧倒的な巨大さで南側90°ほどの視界を占拠している。オレはあの山のちょうど反対側からはるばるやって来たって訳だ。
しかし、これが最後の山行だというのに、なぜかあんまり感慨が湧かない。狭い山頂に、人が多すぎるのだ!まぁGWの中日なので、そんなことを言っても始まらないが…。家族連れが矢鱈と多い。レゲエ調のお兄さんもいたりして、何というか、この山の懐の深さを表している。
若干雲に隠れてはいるものの、南アルプス連峰は一通り見渡せるようだ。ほんの少しだけ雪をかぶった八ヶ岳もよく見えるのだが、この山は御巣鷹山の背後にあって、その御巣鷹山の山頂は目障りな巨大アンテナによって占拠されていてひどく興醒めする。奥秩父・大菩薩・丹沢などの北面〜東面の山々は樹木に遮られてよく見えない。箱根山は遙か遠方にかすかに見えた。

山頂到着!

山頂より富士山

山頂付近は広場になっているが、少々開発され過ぎているような印象を受ける。
三ツ峠山というのは開運山・御巣鷹山・木無山の3つのピークの総称で、一番高い開運山(1785m)が三ツ峠山の山頂ということになっている。御巣鷹山(ちなみに、日航機が墜落した同名の山は群馬県にある)は巨大アンテナだらけなので行く価値なし。木無山は下山時に通過したが、展望もなく頂上とは思えない地味さだった。

下山は、河口湖畔へと到るルートをとる。
尾根道沿いに緩く下って行くので楽だが、だらだらと続いていて長い。目の前、谷を挟んで向こう側に濃い緑の山があるので何だろうと思って地図を広げてみると、三島に越してきてすぐに登りに行った杓子山と、道志山塊の最高峰・御正体山だった。
山頂からは見えなかったが、時折枝の間から眼下に大きな河口湖がのぞまれ、湖面には無数の船がボウフラのような軌跡を描いて漂っていた。霜山とかいう三角点のあるピークは気付かないうちに通過してしまったらしい。
車道を一旦横切ると、天上山ロープウェイの山頂駅はもうすぐだ。その少し手前の開けた地点から見た富士山が、一番大きかった。黒々と広がる樹海、懐に抱かれた富士急ハイランドのジェット・コースター群はちょっとしたオブジェのようだ。
ロープウェイの山頂駅は再び観光客で賑わっていた。山頂からここまで2時間15分ほどかかっただろうか。観光客のお目当てはもちろん富士山であるが、私は、ここにいる大部分の人はおよそ注目しないであろう御坂山・黒岳・毛無山・十二ヶ岳といった河口湖を縁取る山々を眺めていた。

杓子山(右)と御正体山

富士山その2

河口湖

そこから当然ロープウェイには乗らず、よく整備されたハイキングコースを歩いていくとやっと河口湖畔に到達する。
行ってはみたものの、多数の観光客がボートに乗っているだけで別にどうってことはない。
それにしても暑い!温度計を見るとなぜか30℃を指している。実際この日は異常な暑さで、甲府では31.3℃を記録したんだそうだ。
富士急行の河口湖駅までトボトボと歩いて、列車に乗る。三つ峠駅まで7駅もあったけど、そんなに歩いたのだろうか?三つ峠駅から更に20分歩いて、ようやく車に戻ってきた。ラッキーなことに、車を停めてあったグリーンパークという町営の施設は、最近はやりの銭湯を兼ねた地域住民の溜まり場みたいなところだったので、都合よく汗を流して一眠りしてから帰った。

こうして、2年9カ月に及ぶ三島滞在中の山行回数は計22回となり(1回/1.5カ月)、翻って考えてみるとけっこう登ったモンだと思う。
しかし、私は米国へ行かなければならないので、日本百名山は当分お預けである。

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