Home > 世界中の山に登りたい! > 山伏(やんぶし)

山伏と書いて「やんぶし」と読む。何か中世的な響きの、味のあるネーミングだが、そんなにマニアックな山という訳でもない。
この山は、安倍川源流、いわゆる安倍奥と呼ばれる山域で一番高いのだ。この辺は全く未知のエリアであり、三島脱出前に一度は訪れておかなければならなかった。

朝6時半に家を出る。三島に2年半も住んでいながら、沼津インターから東名を西へ向かうのはこれが初めてだった。
道は海沿いを走っていて気持ちがいい。沿道には茶畑。静岡は住みやすい所だとフト思った。
清水インターで下りて、国一を少し走ったのち北上を開始する。安倍川沿いの県道29号線は結構な山道で、途中ほとんど民家はなかった。最奥の集落、梅ヶ島の辺りは、この道ができる以前は相当な秘境ぶりを発揮していたんだろうなぁと思う。しかし、ところどころ小規模な崖崩れが発生しているものの、道は非常に良く整備されていた。
新田バス停で左折し、更に大谷崩れ方面へ向かう道から分岐して西日影沢沿いにデコボコ道を走ると、一歩間違えれば沢に転落しそうな感じの駐車場があった。
8時50分、登山開始。

天気は例によってあまり宜しくない。
登山道はやがて沢から離れ、落石の多発しそうな斜面をくねくねと登っていく。
蓬(よもぎ)峠を過ぎたあたりから雪が現れ始め、暫くして諦めて軽アイゼンを装着する。斜面がつるつるに凍っている所があって、スリップしたらヤバそう。一歩一歩斜面を蹴り込みながら慎重に進んでいく。
やがて、雪がちらちらと舞い始めた。

11時55分、登頂。
山頂は広々とした笹原であるが、一面雪に覆われていて何だか良く分からない。風が強く、非常に寒い。気温は1℃だった。日が射すと一瞬暖かいが、すぐに灰色の雲に覆われてしまう。
取り敢えず、凍えそうな手でお湯を沸かしてカップラーメンを作る。旨い!これで生き返った。
周囲を見渡してみると、期待していた展望の方はサッパリだった。東側、笹原の向こうに富士山が臨まれる筈なのだが、わずかに見える麓の稜線を外挿して、雄大に裾野を広げたその輪郭を想像するより他になかった。

ここが頂上

山頂より大谷崩れ方面をのぞむ

ここに富士山が見えるはずだが…

結局1時間近くも山頂に滞在して、12時50分に下山開始。無難にも元来た道を引き返すことにする。
ここから標高2000mジャストの大谷嶺まで縦走したのち、日本三大崩れの一つ、大谷崩れへ下山するという説もあったが、既にそんな余裕はなかった。
滑落しないよう、下りは登り以上に気が抜けない。蓬峠まで戻ってきた時には内心ほっとした。
同じ道を引き返すというのは退屈だと思っていたけど、山頂に到達してから帰ってくると風景が違って見えることを発見した。さっきは気付かなかったものが見えてきて新鮮だった。
14時40分、駐車場に到着。

黄金の湯という日帰り温泉に浸かり、初めて静岡市に立ち寄ってから帰った。
実は静岡県は山だらけ(しかも、ディープな山)だということに今頃やっと気が付いた。しかし、三島脱出までにあと何回行けるんだろうか?

Copyright 2015 Yoshihito Niimura All Rights Reserved.