読書日記 2008年

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手ごわい頭脳 コリン P.A. ジョーンズ 新潮新書 ★★★☆☆

副題は「アメリカン弁護士の思考法」。ただし、これは交渉に勝つためのテクニック集ではない。訴訟大国アメリカの法に対するロジックを解説した本である。
有名な「マックのコーヒーが熱すぎて訴えた話」というのがある。この判決の賠償金はなんと300万ドルであった。コーヒーをこぼして火傷しただけで3億円!これは「懲罰的賠償金」と呼ばれるものであるが、陪審裁判というアメリカの制度の素晴らしい成功例であるという(実際には、賠償額は約5000万円に減額された)。この評決によって結果的にマックはコーヒーの温度を下げ、消費者環境は改善されることになった。
アメリカ社会は、訴訟を通じて世の中を良くしていこうと考える。つまり、日本の法制度は人々や機関が善意と誠意をもって行動することを大前提としているが、アメリカの制度はその逆を大前提としているのである。こういう社会で生きるのはさぞかし疲れそうだが、この点においてもまた、日本社会はアメリカに追随しようとしている。(08/11/13 読了)

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