読書日記 2011年

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ユージ・ザ・クライマー 羽根田治 山と渓谷社 ★★★☆☆

日本初のプロクライマー、平山ユージの半生。いつもながら、羽根田氏の著作は流れるようで読み易い。

フリークライミングというスポーツは、山に登るという行為から派生したものだが、登山とは随分異質の世界である。ルールが定められたコンペ(競技会)があって、ワールドカップの大会も行われている。平山ユージも、2度世界チャンピオンに輝いている。

一方、フリークライミングの世界には、自然界に存在するビッグウォールに挑むという流れもある。ヨセミテ国立公園にある、高さ1100メートルの世界最大の一枚岩、エル・キャピタン。それを肉体一つでよじ登ろうという行為は、およそ正気の沙汰とは思えない。けれども、彼の凄さは、そんなものではないのだ。

平山ユージの挑戦は、サラテ・ルートをオンサイト(初見で一発で登る)で登ることだった。このワンチャンスだけの試みは残念ながら成功しなかったが、ワンプッシュで登ることには成功。5年後の2002年には、再びサラテに挑み、ワンデイ、オールフリー、ノーフォールで見事にクリアする。その数ヶ月後には、ノーズ・ルートを2時間48分55秒という驚異的な世界新記録で完登。(2008年にはさらに、2時間37分05秒という最速記録を樹立している。)・・・など言われても、それがどのくらいケタ違いに凄いのか、いまひとつピンと来ない。この本が出版されたのは2003年だが、その後も彼は、新たな伝説を次々と生み続けているらしい。(11/09/13読了)

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