読書日記 2014年

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アラビア語のかたち 師岡カリーマ・エルサムニー 白水社 ★★★☆☆

難易度が高いことで有名なアラビア語であるが、俗に「ミミズがのたくったような」と形容されるアラビア文字が、最初の一歩を踏み出す際のハードルを著しく高めている。単語中の位置によって形が変わり、一見すると、どこが文字の区切りなのかさえも定かではない──。

本書は、そういう心理的なハードルを取り除くには絶好である。日本語の五十音表に対応するアラビア語表記から始まっていて、クイズ形式になっているため、読み進めていくうちにいくつかの文字は自然に覚えることができる。ただ、本書はアラビア語のアルファベットの表が載っていないのが大きな欠点で、結局はアラビア語の教科書を買い求めることになる。

実は、アラビア文字は非常にシステマティックにできているので、文字を一通り覚えることはそれほど困難ではない。厄介なのは、短母音を表記しないことだ。だから、文字を覚えたとしても、アラビア語の知識がないと読むことができないのだ。また、発音は実に独特である。特に「アイン」(ع)の発音はヤバい。これは「アラブ」の「ア」なのだが、ただのアではなく、実は「有声咽頭摩擦音」[ʕ]というナゾの子音を伴っているのだ。この子音を持つ言語は、アラビア語・ヘブライ語の他、チェチェン語、アヴァル語、クルド語、ソマリ語、スー語、オック語などのマイナー言語しかないという。

本書には、アラビア語の看板がたくさん出てくるのが楽しい。印刷された文字が読めたとしても、デザイン性の高い装飾文字を読めるようになるまでには、かなりの慣れが必要だろう。アラビア文字はそれ自身が一つの芸術作品であり、カリグラフィーの文化(アラビア書道)が発達している点は、日本語と共通している。

アラビア語は左から表記するため、他の言語と同じ行に共存させることができない。インターネット泣かせの言語である。

ا ب ت ث ج ح خ د ذ

dhāl / dāl / khāʾ / ḥāʾ / jīm / thāʾ / tāʾ / bāʾ / ʾalif

ر ز س ش ص ض ط ظ ع غ

ghayn / ʿayn / ḍhāʾ / ṭāʾ / ḍād / ṣād / shīn / sīn / zāy / rāʾ

ف ق ك ل م ن ه و ي

yāʾ / wāw / hāʾ / nūn / mīm / lām / kāf / qāf / fāʾ

(14/08/30読了 14/10/13更新)

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