読書日記 2016年

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ケンブリッジ数学史探偵 北川智子 新潮新書 ★☆☆☆☆

前作の『ハーバード白熱日本史教室』がちょっと面白かったので読んでみたのだが、こりゃひどい。驚くほど希薄な本。

数学史を語るには、語り手自身が数学をよく知っていなければならない。著者は、歴史学者とはいえ数学科出身なので、その点については問題ない・・・はずである。
しかし、この本には、肝心の数学史がほとんど語られていないのである。テーマは17世紀の数学。といっても、フェルマーの定理など手垢のついた話題だし(しかも、ところどころ表現が不正確)、和算や、中国における数学の発展は興味深い話題なのに、本書に記述は実に薄っぺらい。

どうやら著者の目的は、歴史から「大きな物語」を紡ぎ出すこと、らしいのだが・・・。で、その薄っぺらい記述から紡ぎ出された物語というのが、「パスカルのフェルマーと往復書簡は人間味溢れる。彼らも我々と同じ人間なのだ。ならば、自分もきっとできる!」とか、お粗末すぎる。挙げ句の果てに、本書の結論が「世界基準」「超日本人」とは、もう脱力するしかない。

第1章がなんのために存在するのかも分からないし、文体が突然変わるのも意味不明。(16/02/14読了 16/02/19更新)

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