読書日記 2022年

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独裁者プーチン ★★★★☆ 名越健朗 文春新書

今やプーチンは、押しも押されぬ「ならず者国家の独裁者」に成り下がった。
しかし、この本が出版された2012年は、クリミア併合(2014年)よりも前であり、ロシアは今よりもずっとまともな国だった。プーチン人気の凋落に伴って、10万人規模の反プーチンデモが行われたくらいだから。

プーチンは、かのヒトラーと同様、完全に民主的な手続きを踏んでトップの座についた。
今や信じられないことだが、2006年には、プーチンの故郷であるサンクトペテルブルクに各国首脳を招いてG8サミットが開催された。
ソ連崩壊後、ロシアが欧州の一員に加わる目もあったはずだ。どうしてロシアは、欧米とうまくやれないのだろう?

プーチンは、エリツィン時代に弱体化しきっていたロシアを立て直したから、国民の支持は厚かった。でも、ロシアの豊かさは幻想だった──まるでサウジのように、オイルマネーをばらまいたに過ぎなかった。

本書で興味深かったのは、「国民との対話」と称する年末恒例のテレビ番組である。プーチンは4時間以上にわたって、各地から寄せられた一般市民の質問によどみなく答え、時には直訴に対して水戸黄門よろしくその場で解決を図るという。
現在でも、テレビしか見ない層はプーチンを支持しているというが、その背景にはこのような番組の存在があるのだろう。

少なくとも戦争の前までは、ロシア国民の日本に対するイメージは非常に良かった。なにしろ、プーチンの娘が日本語と日本の歴史を専攻しているほどだ。また、プーチンは柔道に心酔していて、山下泰裕氏が日露の最大のパイプ役だった。
意外にも、2011年の東日本大震災のときにも、ロシアは日本に対して手厚い支援をしている。

でも、世界はもう、永久に変わってしまった。(22/04/11読了 22/10/09更新)

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