読書日記 2022年

Home > 読書日記 > 2022年

英単語の世界 ★★★☆☆ 寺澤盾 中公新書

英単語の語源についてのウンチクを並べた本かと思ったが、そうではなかった。
語り口はやさしいが、内容はかなり論文風。「迂言のdo」(periphrastic do)「婉曲表現」(euphemism)「導管メタファー」(conduit metaphor)「マラプロピズム」(malapropism)「浴槽効果」(bathtub effect)などのジャーゴンが山ほど出てくる。
メトニミー(metonymy)とシネクドキ(synecdoche)の説明は、何度読んでもよくわからない。

空間表現が時間表現に転用されるメタファーは興味深い。
直感的には、未来が前方、過去が後方に対応しそうだが、「先週」という言葉が示すように、前方が過去を表す場合が多い。
ところが面白いことに、「一週間先」といえば未来を表す。つまり、日本語の「先」は過去と未来という正反対の概念に対応している。

フランス語の tu / vous、ロシア語の ты / вы など、ヨーロッパの諸言語は(なぜか)2人称複数形が敬称として使われる(「尊敬の複数」plural of respect)。実は英語の you は、敬称の二人称複数が単数に転用されたもので、かつては単数形(親称)の thou があったが、駆逐されてしまった。
「迂言のdo」にしてもそうだが、英語って美しくないな…と思う。

  • 英語の arrowhead は日本語の「矢じり」である(「矢がしら」ではない!)
  • 「豚に真珠」「目から鱗が落ちる」は、新約聖書に由来する
  • 「にやける」(若気る)は本来、「なよなよした」という意味
  • (22/05/25読了 22/09/26更新)

    前へ   読書日記 2022年   次へ

    Copyright 2022 Yoshihito Niimura All Rights Reserved.