読書日記 2025年

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ルポ トランプ王国 ★★★★☆ 金成隆一 岩波新書

本書を読むと、なぜトランプが、クレイジーに思える関税政策に固執するのか──どう考えてもアメリカにとってマイナスなのに──が納得できる。

われわれは、現在でもアメリカは世界一の経済大国だと思っている。でもそれは、IT関連のイノベーションがいつもアメリカで起きるからであり、(イーロン・マルクやサム・アルトマンといった)IT業界で大成功したごく一部の層しか見ていないからだ。 

246頁の「象グラフ」が腑に落ちた。
ここ20年の間に(といっても1988年から2008年までの20年間だから、現在から見れば状況はさらに極端になっているのかもしれない)、中国やインドなど新興国の中間層は豊かになり、アメリカなどの先進国の富裕層はもっと豊かになった。その中で、先進国の中間層のみが逆に貧しくなったのである。
アメリカのミドルクラス──とりわけ製造業に携わる人たち──は、貧困層に転落しそうなギリギリのところにいる。彼らは、グローバル化によって新興国に仕事を奪われた、グローバル化の敗者なのだ。その不満をうまく掬い上げたのが、トランプだったのである。

本書で取材しているのはラストベルト(「錆びついた工業地帯」)と呼ばれる地域で、私がかつて住んでいたペンシルバニア州や、その隣のオハイオ州が含まれる。アメリカの保守地域といえば中西部〜南東部のバイブルベルトだと思っていたから、これはやや意外だった。

それにしても、トランプ大統領の1期目に、アメリカは良い方向に向かったのだろうか?
現に再選されてしまったのだから、トランプは大統領としてそれなりの成果を上げた、と見る人が一定数いるということだろう。(25/05/16読了 25/05/17更新)

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