読書日記 2025年

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「性」の進化論講義 ★★★☆☆ 更科功 PHP新書

「性」はなぜ存在するのか。ということが、なぜ生物学上の大問題であるのか。
そして、「赤の女王仮説」とはなにか──ということを理解したくて(あるいは、どう説明されているかを知りたくて)読んだ。

とはいえ「性の進化」といえば性淘汰の話なので、本書も後半は性淘汰に当てられている。
性淘汰といえば、アモツ・ザハヴィの「ハンディキャップ理論」が有名である。
オスのクジャクの長い尾羽のような誇示形質がなぜ進化しうるのか。それは、「自分はそのようなハンディキャップがあっても大丈夫なくらい実力に余裕があるのだ」ということを宣伝するためだ、という。
しかし、これは何も説明したことになっていないのではないか。

例えば、Aさんは10キロの重りを持ち上げることができ、Bさんは20キロの重りを持ち上げることができるとしよう。この場合、Bさんほうが優れた個体だといえるだろう。
しかしそれは、重りがない状態で比べたときの話である。もし、Aさんには10キロ、Bさんには20キロの重りが常に付けられているとすれば、両者は引き分けとなる。
クジャクの例で言えば、長い尾羽をもつオスは常に長い尾羽というハンディキャップとともにある(そして、長い尾羽という形質は遺伝する)のだから、その個体は優れているとはいえない。
よって、ハンディキャップ理論はナンセンスである。

本家はもっと深いことを主張しているのかもしれないが、少なくとも本書の説明は納得できなるものではなかった。(25/05/23読了 25/05/24更新)

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