読書日記 2025年

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創価学会 ★★★★☆ 島田裕巳 文春新書

自民党との連立を解消して俄かに注目を集めた公明党であるが、その支持母体である創価学会とはいかなる団体なのか?
それが気になって本書を繙いてみたが、とても読みやすく、ストンと腑に落ちた。

創価学会の公式サイトによれば、創価学会の信者は日本に827万世帯もいるという。
日本の総世帯数が5400万だから、5人に一人は創価学会員ということになる。これはちょっと信じられない数値だ。
もっとも、近年は宗教2世・3世の問題もあって、子が親の信仰を引き継ぐとは限らないから、実際はそれよりずっと少ないだろう。

創価学会の創始者(牧口常三郎)は小学校の先生で、元は教育団体としてスタートした。だから、創価「学会」という、およそ宗教団体らしくない名称になっている。
牧口は晩年になってから日蓮正宗の信仰をもつようになり、やがて教育論にもその教義を反映させるようになっていく。つまり、創価学会は、教祖の神憑り的な体験に基づいて設立された新興宗教とは一線を画しているのである。

創価学会が急速に勢力を拡大していったのは、高度経済成長期だった。
創価学会を支持したのは、都市部の低学歴層だったという。彼らの多くは農村の次男、三男で、出稼ぎで都会に出てはきたものの、その生活は容易ではなかった。それでいて、伝統的な共同体からは切り離されてしまっていた。
そんな彼らの受け皿になったのが創価学会だった、というわけだ。
創価学会は、下層階級の人たちの相互扶助システムとして機能したのだ。芸能人に学会員が多いのも頷ける。

当時、大学のインテリ達は左翼運動に身を投じていた。
もし創価学会がなければ、農村部から都市部に流れ込んできた低学歴層が共産主義に傾倒し、革命が起きていたかもしれない。創価学会の存在が、共産化に対する防波堤になったのだ。
だから、その出自からして、公明党は自民党と相性が良いのである。
──この説明は、目からウロコだった。
創価学会とは、高度経済成長が産んだ鬼っ子なのである。

やがて創価学会は、日蓮正宗と袂を分かつことになる。
しかし、創価学会が仏教系の宗教団体である以上、公明党は世界の恒久平和を謳っている。そうであれば、現在のタカ派の自民党に対して距離を置くという判断も納得できる。

創価学会といえば、誰もが池田大作を思い浮かべるだろう。
池田大作は、実際にトインビーやネンソン・マンデラ、ゴルバチョフ大統領(当時)や周恩来などと対談していてるから、よほど人間的魅力があったと見える。
自分が若かった頃の時代が歴史になってから、その面白さに気づくのである。(25/10/13読了 25/11/25更新)

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