読書日記 2025年

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世界秩序が変わるとき ★★★☆☆ 齋藤ジン 文春新書

なかなか刺激的なことが書かれているが、金融の世界はドロドロし過ぎていてあまり近寄りたくない。
著者は国際政治学者でもなんでもなく、ヘッジファンド向けのコンサルタントという謎の職業だ。それなら、分析した情報を使って自分で大儲けすれば良いのに…と思うのだが、それではつまらないのだろうか。
それから、著者は名前からして性別不明だが、実際トランスジェンダーである。

著者によれば、1980年代に日本が我が世の春を謳歌できたのも、90年代以降の失われた30年も、すべてはアメリカ様の掌の上で踊らされていたに過ぎないという。
すなわち、前者はソ連との冷戦のため日本に防波堤になってもらう必要があったからだし、後者は強くなり過ぎた日本を叩くために「グローバル化=新自由主義」のルールを押し付けたからだと言う。そして、そのグローバル化=新自由主義の恩恵を最も受けたのが中国だった。
しかし今度は中国が強大化し過ぎたため、アメリカは全力で中国潰しにかかっており、今まさにゲームチェンジが進行中である。アメリカとしては、再び日本に強くなってもらう必要があり、日本にとっては千載一遇のチャンスが巡ってきたところだ。

・・・というと、希望の湧いてくる話のように聞こえる。
少々アメリカを買い被りすぎのような気がするが、とはいえ確かに、私が生きている間に中国やインドがアメリカに代わって覇権国家になる、ということは起こりそうにない。

新自由主義は非正規雇用を生み、格差を拡大させるばかりで、ロクなことがなかった。だから、それが否定されつつあるのは喜ばしいことだ。
(なお著者は、日本では「失われた30年」でみんなが少しずつ貧しくなりながらも雇用を守ったことで、社会の分断を防いだから、ヨーロッパなど他の国に比べればマシだったと述べている。)
でも一方で、世界の国々が経済的な結びつきを深めたことで、紛争が起きにくくなったというポジティブな側面もあったはずだ。
グローバル化=新自由主義が否定された結果、国家と国家が力でぶつかり合う野蛮なナショナリズムが跋扈する世界線に逆戻りしてしまったように思える。
だから、今がチャンス!などと言って浮かれている場合ではない。(25/10/23読了 25/11/25更新)

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