2000年 46冊

(★〜★★★はお薦め度

「台湾紀行〜街道をゆく40〜」 司馬遼太郎 朝日文庫 ★★☆
     台湾の歴史は複雑である。ふるくは"無主"の地だったという。オランダに占領された時代もあった。日清戦争に敗れた清朝は、台湾を"化外の地"として捨て石にした。以来50年以上も、ここは日本だったのだ。戦後、共産党に破れた蒋介石は、ここに"中華民国"という国家の幻影を持ち込んだ。二・二八事件。外省人による弾圧。実は台湾は、全土に敷かれた戒厳令が解除されてからまだ15年しか経っていないのだった。
     植民地支配は悪である。しかし日本は台湾において、帝国大学を設け、教育機関を整備し、水利事業をおこし、鉄道と郵便制度を整えた。現在でも、山岳部に住む先住民族の間の共通語は日本語であるという。台北の余りにも日本的な街並みや、「哈日族」と呼ばれる日本大好きな台湾っ子たちの存在は、その歴史に深く根差しているのだ。その点で、韓国とは大きく異なるのだろう。('00.12.21)
「愛すること信じること」 三浦綾子 講談社現代新書 ★★
     単なるノロケ話や!ま、しかし、「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」と申しまして。('00.12.10)
「純愛時代」 大平健 岩波文庫 ★★☆
     精神科の症例を通して見た、イマドキの若者の恋愛事情。人生とは、まことに妙なものだ。('00.12.9)
「神々の山嶺 (上)(下)」 夢枕獏 集英社文庫 ★★★
     エベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む伝説のクライマー、羽生丈二。8000mを越える高所で人間はどうなるのか、リアルな描写につい引き込まれてしまう。('00.11.25)
「銃・病原菌・鉄 (上)(下)」 Jared Diamond 草思社 ★★★★
     「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」ニューギニア人ヤリの素朴な問いかけに端を発して、人類史の謎をめぐる壮大な物語が始まる。1532年、スペイン人ピサロが皇帝アタワルパを捕らえ、インカを征服することができたのは、彼らが「銃・病原菌・鉄」を持っていたからである。ではなぜ、スペイン人はそれらを持ち、インカ人は持たなかったのか?——究極の原因は、ユーラシア大陸が地球最大の陸地であり、横長だからだ、というのが本書の主旨である。非常に説得力がある。
     しかしそれでもなお、世界に横たわる不均衡はとても納得できるものではない。何故ヨーロッパ人は、アメリカ原住民を500年にもわたって迫害し続け、アフリカ人を奴隷化し、オーストラリア原住民を殺戮して絶滅寸前にまで追いやり、タスマニア人を実際に絶滅させるようなことをしてしまったのだろうか?ユーラシア大陸が圧倒的に有利であることは分かったが、なぜ中国やインドでなくてヨーロッパなのか?ここ2世紀ほどの異常な時代も、「歴史上のよくあるパターン」で説明できるものなのだろうか?
     ヤリの故郷ニューギニアは、台湾から「ポリネシア特急」に乗って西はマダガスカルから東はイースター島にまで拡散していったポリネシア人たちの上陸を阻み、ヨーロッパ人の侵略を唯一免れ得たユーラシア以外の文化圏という意味で、極めて興味深い貴重なところなのだ。('00.11.20)
「シベリア動物誌」 福田俊司 岩波新書 ★★☆
     サハリン・チュレニー島のオットセイやウミガラスの群、千島・ウシシル島のクラーテル湾、ペトロパヴロフスク=カムチャツキーより望む山々。シベリアの光景は、ちょっとよその星みたいで、ヤバいくらい美しい。是非とも訪れてみたいものだ。('00.10.15)
「ASIAN JAPANESE 2」 小林紀晴 情報センター出版局 ★★
     アジアの旅で出会った旅行者は、誰もが何かを探すためにそこにいた。パリに生きる日本人は、誰もが何者かになろうとしている途中の姿であった。肩書きはないけれど、そこには意志があった。そして、それを見ることは、僕のモラトリアムの終焉を感じることでもあったのだ。('00.10.8)
「彼方の山へ」 谷甲州 中公文庫 ★★
     筆者はSF作家である。厳冬期南アルプス全山単独縦走。海外青年協力隊としてネパールに渡り、カンチェンジュンガ隊に測量技師として参加。やがて、7077mのクン峰に登頂。このレベルだったら到達可能なのだろうが、それでも実現はひどく困難だ。('00.9.18)
「快適睡眠のすすめ」 堀忠雄 岩波新書 ★☆
     快適な睡眠は充実した人生の必要条件。ダ・ビンチ式に、4時間ごとに30分の睡眠を取れば生きられる。午後2時に20分間の昼寝を取るのがいい。などなど。('00.9.16)
「きらきらひかる」 江國香織 新潮文庫 ★★
     なんてことはないけど、美しいなぁ、確かに。ピュアなハートに贈る恋愛小説、なの?('00.8.10)
「話を聞かない男、地図を読めない女」 Allan & Barbara Pease 主婦の友社 ★★☆
     男女の脳の差異がダーウィン流の自然淘汰で説明できるのかどうかはさておき。「男は自分の居場所がわからなくても、北の方角だけはわかる」など、??なのもあるが、「男は理想のパートナーを探しつづける。しかし結局はむだに年をとるだけ」なんていう思わず笑ってしまう格言で満ちている。('00.8.5)
「人体再生」 立花隆 中央公論新社 ★★
     こういう研究室訪問式の読み物は立花隆の独壇場だ。医学の目的は生命の維持よりむしろ健康の維持にあるべきで、再生医学は21世紀の医療の方向性を示していると思う。('00.8.5)
「脳を鍛える」 立花隆 新潮社 ★☆
     ヴァレリーの「テスト氏との一夜」と、パリティの破れについて同時に精通していることに何の意味があるのだろう?(もっとも、後者に関する著者の知識は通俗書の寄せ集め以上のものではないと思う)教養なんてものは自分の興味に従って身に付けるもので、それこそ他人から「強要」されるべきものではないはず。生半可な知識を振りかざす位なら、所謂文科系と理科系が乖離している方がまだ健全だって気がする。この本から得るものがあるとすれば、事実この本は良く売れているわけであり、著者のいう「知的アウトプット」の大切さを身をもって証明しているということだ。('00.8.1)
「カンブリア紀の怪物たち」 Simon C. Morris 講談社現代新書 ★☆
     Burgess Monsters発見の物語の主役の一人である筆者によって展開されるグールド批判。生物のデザインには限りがあって、むしろ進化のプロセスは予測可能であるという主張で、その根拠として、生物界の至る所に見られる「収斂」という現象を挙げている。また、これは如何ともし難いことだが、「カンブリア紀において異質性は最大だった」というグールドの説の前提自体がどうも怪しくなってきているらしい。('00.7.23)
「韓のくに紀行〜街道をゆく2〜」 司馬遼太郎 朝日文庫 ★★☆
     韓国を訪れてみると、日本との類似点の多さに驚くだろう。しかし両者が辿ってきた歴史はかなり異なっている。李朝500年の歴史は徹底した儒教(律令)体制であり、それが「アジア的停滞」をもたらしたのに対し、日本においては形式よりも実益を重視する封建体制であってむしろアジア的に見れば大いなる例外であった。それにしても、ホテルのフロント係にボラれたエピソードからアジア式国家について解き起こすあたり、司馬さんのスケールの大きさはどうだろう。「街道をゆく」シリーズがいまだに良く読まれていることの所以である。('00.7.20)
「ワンダフル・ライフ」 Stephen J. Gould ハヤカワ文庫 ★★
     アノマロカリス、ハルキゲニア、オパビニアといったバージェス頁岩のモンスターたちの物語。逆円錐形に多様性が増大するという進化観は誤りで、初期に異質性は最大となりあとは"decimation"(非運多数死)によって先細りになる。従って、生命のテープをリプレイしてみれば、展開される歴史は毎回ひどく異なったものとなり人類は決して出現しない、というのが著者の主張である。豊富な引用で過度に装飾された文体は読みにくく、冗長である。しかも、この手の本には仕方のないことだが、前提となるデータが既にかなり古くなっている。('00.7.17)
「科学の現在を問う」 村上陽一郎 講談社現代新書 ★☆
     今まさに自分が生命科学と情報科学の交差点で仕事をしている以上、科学と社会との関わりについて無関心ではいられない。ただこの本は結局、一般の人々も科学の知識を持たなくてはならないし、科学者といえども社会について知っておかなければならない、科学は今や現代社会の非常に深いところにまで入り込んでいるのだから、というありがちな結論に堕ちていて、やや尻すぼみのような気がする。('00.7.2)
「ASIAN JAPANESE 3」 小林紀晴 情報センター出版局 ★★★
     「旅の時間に身をさらされていると、必ず僕を襲うどこからか必ずやってくる感覚がやはりやってきた。─(中略)─少し思いがけないことだったが、それが日本の中で起きたことが正直うれしかった」。分かるなぁ、この感覚。この感覚を味わうために旅に出るんだもんなぁ。そして沖縄は、この感覚を味わうことのできる日本で唯一の場所なのかも知れないな。('00.7.1)
「精神病」 笠原嘉 岩波新書 ★★
     若かりし頃、芥川龍之介の「歯車」という小説を愛読していたのだが、これは分裂症の妄想が出現しようとする瞬間を描いたものだったのか。('00.6.27)
「フェルマーの大定理が解けた!」 足立恒雄 講談社ブルーバックス ★★☆
     この本は、見かけによらず素晴らしい本だった。これだけを読もうとすると挫折するのだろうが、前掲の本と併読することによって驚嘆すべき現代数学の美しい世界を垣間見ることができた。
     結局、フェルマーの定理の証明とはこういうことらしい。まず、驚くべきことに、全ての楕円曲線(=種数1の曲線)は、モジュラー関数という一見何の関係もなさそうな極めて特殊な関数と同一視できる(これが谷山=志村予想で、ワイルズは特殊なケースについてこれを証明した)。それで、もしフェルマー方程式に解があるとすると、その解を係数とする楕円関数は、モジュラー形式の世界であり得ない性質を示すというのだ。何とも不思議な証明で、高い所から俯瞰すると別の側面が見えてくるということなのだろうが、こんなにも回りくどいことをしないとこの問題は解けないのだろうか?
     こういう谷山=志村予想みたいなのが成り立ってしまうから、数学者は「数学的実在が厳然として存在する」とか「数学の真理が宇宙の真理と深いところで通じている」とかいう宗教的な信仰をもつ訳だ。ナルホドねぇ。('00.6.18)
「フェルマーの最終定理」 Simon Singh 新潮社 ★★☆
     この本は面白いので一気に読むことができる。但し、この本には殆んど数学は出てこない。
     数学に限らないのだろうが、常人には窺い知れない高みに到達したごく一部の人間というは、宗教的な感覚を味わうことができるのだろう。('00.6.18)
「五〇歳から再開した山歩き」 本多勝一 朝日文庫 ★☆
     「パイオニア=ワークとしての登山」をアツく語っていた筆者も「知命」の齢を迎え、随分と軟弱になったものだ。こんな山とは呼べないようなシロモノについてまで書く価値があるのだろうか(西表島横断など一部面白いものもあるが)。文章は、お上に対する苦情・種の同定から旅館のメニューに至るまでごちゃ混ぜで、およそ文学的でなく、ついでに品格もない。('00.6.17)
「命ある限り」 三浦綾子 角川文庫 ★☆
     「氷点」が入選して以降の文筆生活を描く自伝。いくら神に祈ってもものごとは解決しない。それでも、こういう生き方を実践できる著者は実に偉大だと思う。
     もう一つ、「忙しいという字は心を亡ぼすと書く」。いくら忙しいつもりでも、読み続けることを怠ってはならない。('00.6.12)
「続・氷点 (上)(下)」 三浦綾子 角川文庫 ★★★
     「この世を終えて残るのは、集めたものではなくて、与えたものである。」こんなことが言えるようになるまであと何年かかるだろうか?('00.5.28)
「氷点 (上)(下)」 三浦綾子 角川文庫 ★★★
     陽子、啓造、夏枝、徹の4人家族が繰り広げる人間模様。これはフィクションであって、こんなドラマみたいなことは起こりっこない、と思いつつ、歳のせいか、やっぱり自分のために生きる人生は虚しいのかなぁと最近思うようになってきた。('00.5.20)
「優しい時間」 灰谷健次郎 角川文庫 ★★
     著者は沖縄の渡嘉敷島で原稿を書きつつ、半農半漁の生活を送っている。歳をとるにつれて、こういう生き方をすることがいかに難しいかが実感できるようになってきた。でも、こうすることが果たして幸せなのか、それは今のところよく分からない。('00.5.13)
「続 日本人の英語」 マーク・ピーターセン 岩波新書 ★★
     アメリカ英語が世界の共通語になりつつある現在、私にとって英語というのはアナウンサーの喋る標準語のような一種のよそよそしさを感じるドライな言語である。もとより映画の台詞の中の微妙なニュアンスを汲み取るほどの英語力は必要ないのだが、 "meadow"、"strawberry"などのAnglo-Saxon系の単語は大和ことばのようなやわらかい響きがある、というのはナルホドと思った。('00.5.2)
「日本人の英語」 マーク・ピーターセン 岩波新書 ★★
     a/the/無冠詞の使い分けを決めているのは意味的カテゴリーの違いであって、つまり英語的な世界観そのものである。こういう言語の根幹をなす概念というのは、後天的に学習しても決して感覚的には理解できないのだろう。('00.4.23)
「科学の目 科学のこころ」 長谷川眞理子 岩波新書 ★☆
     さらっと読める平易なエッセイだけど、あんまり印象にも残らなかった。('00.4.21)
「夢分析」 新宮一成 岩波新書
     空飛ぶ夢は言葉の獲得、虫にたかられる夢は妊娠、「三」は「ファルス」の象徴。こんな都合のいい夢見たことないけどなぁ。まぁ酒の席のネタくらいにはなるか。('00.4.10)
「大往生」 永六輔 岩波新書 ★☆
     私もあと半世紀も生き存らえれば老人になるのだろうが、あまりにも実感から遠い本書の中で唯一印象に残ったことば───「人間、今が一番若いんだよ。いつだって、その人にとって今が一番若いんだよ。」('00.4.1)
「地球環境問題とは何か」 米本昌平 岩波新書
     地球環境問題を科学史の視点から読み解くという一風変わった本であるが、国際政治の細かい記述が多過ぎて少々退屈だった。この本の分析によると、地球環境問題とは米ソ冷戦の終焉後に急浮上してきた南北問題の別表現である。この美しい自然がいつまでも残っていてくれればいい、という素朴な感覚からスタートして環境問題の本を読み進めたが、こんな風に分析されると興醒めしてしまう。ただ日本は、エネルギー単位あたりの富の産生が著しく高い環境優等国家なので、もっと国際政治の舞台で発言すべきなのではないだろうか。('00.4.1)
「地球環境報告II」 石弘之 岩波新書 ★★
     中国、シベリア、東南アジア、インド、欧州、アフリカ、中南米、南極。地球上のどこを見渡してみても、状況は絶望的である。森林は消失し、土壌は砂漠化し、河川は干上がり、氷河は溶け、珊瑚礁は死滅し、少数民族の文化と誇りは失われる。しかもそれが10年というタイム・スパンで急激に進行しているのだ。もはや地球上に美しいところはあまり残されていないし、それが失われるのも時間の問題という気がする。なぜなら、世界遺産とかいってピンポイント的に保存してみても、システムが機能しなくなればもはやホメオスタシスは保てないからだ。
     問題だけを提起して解決策を提示しないのは無責任ではないか?危機感の欠如が対策への怠慢を生み出している、それはそうかもしれないが、いくらペットボトルのリサイクルをしてみたところで熱帯雨林は焼かれていくのだし、一市民に一体何ができるというのだ?('00.3.20)
「地球環境報告」 石弘之 岩波新書 ★★
     地球上の至る所で進行する自然破壊。この本によると、諸悪の根元は発展途上国における人口爆発である。ここまで問題の規模が大きく、かつ絶望的であると、ただ無力感を感じるだけで行動する気も起こらなくなってしまう。('00.3.12)
「地球持続の技術」 小宮山宏 岩波新書 ★★☆
     一口に環境問題といっても様々な側面がある。本書は、石油資源の枯渇・地球の温暖化・廃棄物の大量発生という3重苦から逃れ、地球を持続させる物質循環型社会を実現するための、技術サイドからの提言である。エネルギーと物質の流れという観点から見たとき、文明社会は地球に対して何をしているのか?省エネルギーは物理的にどこまで可能なのか?これらの問いに対する答えが、簡潔にして要を得た文章によって実に分かり易く述べられている。目からウロコが落ちるとはまさにこのことだ。('00.3.1)
「自然保護という思想」 沼田真 岩波新書 ★☆
     「環境にやさしい」とか「生物多様性を守れ」とかいうスローガンに偽善的なウサン臭さを感じてしまう人もいるかもしれない。自然を保護しなければならない理由の一つは、これ以上自然破壊が進むと人類の生存が脅かされるからであり、もう一つは「自然(=健全な生態系)は心の安らぎを与えてくれる」という<宗教的な>理由であろう。愛知万博も全面的な見直しを迫られているし、確かに時代は動いたのだろうが、今まで自然をさんざん痛めつけてきた所謂「科学技術」もかつては<宗教>だったのだから、人間とは奇妙なものだ。
     本書のキーワードは「持続可能性(sustainability)」である。科学に携わる者の責任として、実学的な意味を急に帯びてきた生態学をもっと知っておく必要があることを感じた。('00.2.20)
「唯脳論」 養老孟司 ちくま学芸文庫 ★★
     「唯脳論」というのはある意味当たり前なのだが、脳科学の進歩の多くが90年代にもたらされたことを考えると、この本はやはり画期的である。本書が「一連の脳ブームの端緒を拓いた」のだ。前半は分かり易く、視覚と聴覚の連合がすなわち言語の成立であるという考察は面白いが、後半は難解である。('00.2.10)
「ワインの常識」 稲垣眞美 岩波新書
     「なめらかに品のいいコクとふくらみのある風味」とか、首をかしげたくなる表現にしばしば出会うけど、まぁこういう世界もあるってことで。('00.1.25)
「ダイビングの世界」 須賀潮美 岩波新書 ★☆
     いくら色とりどりの魚たちが泳ぐ珊瑚礁の海がキレイだって言われても、所詮は登山客に踏み荒らされる山と同様に、多くのダイバーが潜れば海は汚れるし、観光開発によって自然と文化が破壊されるんだと思っていた。でも、諫早湾は行政が破壊したけど、三番瀬を生き残らせたのは市民の力だった。大切なのは、まず自分の目で確かめてみること、そしてその中から希望を見出すことだ。よし、ひとつ俺も潜ってみるか!('00.1.22)
「AV女優」 永沢光雄 文春文庫 ★★☆
     42人のAV女優へのインタビュー集。とてつもなく物悲しいような、そうでもないような、とにかくスゴい本だった。('00.1.16)
「少年H(上)(下)」 妹尾河童 講談社文庫 ★★★
     最近ヒロシマとオキナワを訪れた。あの戦争は本当に悲惨なものだったけど、何かヘンだと思いつつもそれなりに楽しいこともありながら、したたかに生きてきた市民たちがいたこともまた事実だろう。戦争の実感からかけ離れたところにいる我々の世代の人間に、<等身大の理解>をもたらしてくれる貴重な記録である。そして何より、小説として非常に面白い。('00.1.12)


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