Home > 世界中の山に登りたい! > 谷川岳 西黒尾根〜オキノ耳〜天神尾根〜田尻尾根

【第0日】

13:58 上野駅発(新幹線)
15:16 高崎駅発(上越線)
17:38 水上駅発(上越線)
17:47 土合駅着
18:15 土合山ノ家着

上越国境に聳える谷川岳は、昭和6年に統計を取り始めて以来、2005年までに実に781人もの遭難死者を出している「魔の山」である(Wikipedia参照)。
しかし、ロープウェイで天神平まで上がってしまえば、2時間足らずでピークを踏むことができるお気軽登山となる。そのためこの山は、車で乗り付けて、ロープウェイを使って日帰りで登られることがほとんどのようである。
だが、山は麓から自分の足で歩いて登らなければ意味がない。やはりここは、オーソドックスに長大な西黒尾根から登るべきである。この道は、昭和30年代の第一次登山ブームのときには、夜行列車でやってきた登山者が列をなしていたという。

避難小屋泊まりにすると荷物が増えるので、1日目は移動のみとして、麓にある「土合山ノ家」に宿泊することにする。
JR上越線は、高崎〜水上間は1時間に数本走っているが、水上〜越後湯沢間はなんと1日5本しかない!水上駅から土合駅へはバスが1時間に1本走っていて、ちょうど接続する便もあったのだが、敢えて昔風に電車で行くことにする。そのため、水上駅周辺で1時間ほどブラブラして時間を潰す。利根川沿いに遊歩道があった。

上越線の水上〜越後湯沢間は全く実用的でないので、鉄道マニアと、酔狂な登山者くらいにしか利用されていないようである。
水上から2駅で土合に到着。ここは「日本一のモグラ駅」ということで有名で、地上に出るためには462段もの階段を上らなければならない。駅のホームはひんやりとして薄暗く、水滴が滴っていて、不気味さ抜群。最近の地下鉄もかなり深いが、これだけの階段が一直線に伸びている様はなかなか壮観である。もちろんエスカレーターやエレベーターはなく、全くバリアフリー化されていない。この駅を使って通勤する人は大変だ…と思うかもしれないが、土合駅周辺には一軒の民家もないので問題ない。

土合駅の長〜い階段

ようこそ「日本一のモグラ駅」へ!

ちなみに反対側の上りホームはどうなっているかというと、普通に地上にあった。
地上に出てみると、既に日が暮れていた。照明はほとんどない。なんかすげぇ所に来てしまった、と思った。
土合山ノ家は駅前にあると思っていたのに、実際はぐるっとまわって踏切を渡り、駅の反対側に行かなければならなかった。異常に蒸し暑く、汗びっしょりになった。
土合山ノ家には、何百人も収容できそうなほど沢山の部屋があったが、その大部分は使われていないようだった。この日も宿泊者は5,6人に過ぎなかった。しかしサービスは良く、夕食はカニ、ハンバーグ、刺身コンニャクなどなどでなかなか豪勢だった。

【第1日】

05:05 土合山ノ家発
05:45 西黒尾根登山口
08:00 ラクダの背
09:40-10:15 谷川岳(トマノ耳)山頂
10:30-10:50 谷川岳(オキノ耳)山頂
11:10-11:30 肩の小屋
12:15-12:30 避難小屋
14:10 ロープウェイ土合口駅着
15:05 ロープウェイ土合口駅発(バス)
17:30 水上駅発(上越線)
18:27 新前橋駅発(高崎線)

翌朝4時半に起きる。何度も目が覚めたためあまり眠れなかった。外は霧。
5時にはもう明るくなっていて、宿を出発する。防寒具を沢山もってきたのに、早朝から蒸し暑い。
宿から登山口までは意外に遠かった。山道に入ると、いきなり急登が始まる。しばらくすると雨が降り始め、ヤレヤレと思いつつ雨具を着る。
ところが、稜線に出ると俄かに明るくなって、晴れ間も見えてきた。やがて何カ所かの鎖場が現れるが、手掛かりが多く特に問題はない。

晴れ間が見えた!

西黒尾根の鎖場

ラクダのコル(鞍部)まで来ると、頂上まであと一歩という気分になるが、実際はここから先も結構キツかった。
ようやく頂上到着。やっぱり4時間かかった。疲れた。
谷川岳にはピークが2つあって、ここ(「トマノ耳」)よりもさらに15分ほど歩いたところにある「オキノ耳」の方が標高が高い。
展望はイマイチだった。西側の万太郎谷は谷底まで覗き込むことができたが、東側はまったく見えない。頂上には着いたものの、あまりテンションが上がらない。食欲もなく、宿で作ってもらったオニギリも食べる気がしない。

トマノ耳よりオキノ耳(右)、一ノ倉岳(左)

トマノ耳より万太郎谷

オキノ耳へ移動する。オキノ耳の東側にある、有名は一ノ倉沢はやっぱり厚い雲の向こう側だった。非常に蒸し暑い。

谷川岳(オキノ耳)山頂

当初の予定では、天神峠を越えて谷川温泉に下山するつもりだった。そうだとすると、下りにもなお4時間ほどを要することになるので、あまりのんびりしてはいられない。さっさと下山開始。
肩の小屋周辺には夥しい数の登山者がいた。ロープウェイを使って天神尾根からやって来た人々である。相変わらず中高年遠足軍団が多い。どうでもいいのだが、いいトシをして集団行動して何が楽しいのだろうか?
肩の小屋は、無人小屋とはいえとても広くて立派だった。売店もあった。朝から満足に食べていないので、非常に暑かったけれども、塩分を摂取するために400円の大枚をはたいてカップラーメンを購入する。
これで復活し、天神尾根を駆け下りる。避難小屋に着いた。さて、これからどうしよう?もはや天神峠を登り返す元気がなかったし、保登野沢沿いの道はあまり歩かれていないようだったので、疲労感のため弱気になってきた。
すると、選択肢は2つ。妥協してロープウェイに乗るか、ロープウェイの下を通っている田尻尾根を下りるかである。

天神尾根の道は非常によく整備されていて、多くの登山者がロープウェイに向かっていく。ところが、見落としそうなところに分岐があって、これが田尻尾根を下る道だった。入り口が背の高いササに覆われていて実に分かりにくい。
ロープウェイ乗り場に行けば冷たいのジュースやソフトクリームがある…という考えが頭を掠めるが、誘惑を振り払って細い急坂を下り始める。この疲労度でなおも歩き続けるとどうなるのかを実験するためもあった。
それにしても、下りでこんなに調子が出ないことはかつてなかった。天神尾根とはうって変わって、全く人通りがないのも精神的なダメージになった。すぐ横を悠然と通り過ぎてゆくロープウェイを恨めしそうに眺めながら、やがてその場にへたり込んでしまった。なにか腹に詰めようと思ってオニギリを頬張ってみるが、嘔吐しそうになった。やばい、熱中症になりかかっている!
ここで、オニギリに付いていた、漬け物のパックを開けて食べてみると、嘘のように元気が出てきた。大量の発汗で体内の塩分が流れ出てしまったのだ。疲れたときには糖分を摂取するけれども、塩分の摂取も同じくらい重要なのである。

田尻尾根をゆく

立ち上がると同時に両足が攣ったが、気合いで歩き始める。するとやがて、工事用の車の轍のある広い砂利道に出た。そのままその広い道を下ってゆくと、初めて人に出会った。これで一安心。
なおも進んで行くと、ロープウェイの駅のすぐ横に出た。そこにはロープが張られていたので、ここは正規の登山道ではなかったようである。やれやれ、やっと着いた…。
水上駅行きのバスは5分前に出たところで、次のバスは1時間後だった。1.2リットル(3本)ほどのジュース類をガブ飲みし、ソフトクリームを食べた。

水上駅から、タクシーで谷川温泉の「湯テルメ谷川」という日帰り温泉施設へ向かった。当初の予定では、下山するとここに降り立つはずだったのだ。
行ってみると、非常な混雑ぶりだった。入浴中に夕立があり、大雨になった。休憩室も大混雑で、とてもくつろげたものではない。ちょうど雨も上がったころ、タクシーで退散した。
水上駅前でお土産としてシソジュース、湯の花などを購入。新前橋駅でうまい具合に上野行きの快速アーバンに接続し、鈍行列車にガタゴト揺られて帰った。

谷川岳は山が大きいので、上りも下りも時間がかかる。今度は馬蹄形縦走にでも挑戦してみたいものだ。(06/09/11)

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