シリーズ日本近現代史6 アジア・太平洋戦争 吉田裕 岩波新書 ★★★★☆
これは、本シリーズの第5巻(『満州事変から日中戦争へ』)とは違って、なかなか分かり易かった。オーソドックスな教科書という感じで、アジア・太平洋戦争を様々な角度からバランス良く、しかもコンパクトに記述している。淡々と事実のみが書かれているのが良い。非常に勉強になった。
本書では、1941年12月に始まり、45年9月の降伏文書調印で終わった戦争を「アジア・太平洋戦争」と呼んでいる。それは、「当時使われた『大東亜戦争』は、あまりにイデオロギー過剰な呼称であるし、現在一般的に使われている『太平洋戦争』も、日米戦争本位の呼称で、中国戦線や東南アジアの占領地の重要性が見失われてしまう可能性がある」という理由による。私も今後、この呼称を使うことにしよう。
アジア・太平洋戦争に関して、中国との戦争が侵略戦争であったことはあまり異論がないと思う。しかし、アメリカとの戦争は侵略戦争であったのかどうか。著者は、「日米同罪論」、あるいは、アジア・太平洋戦争は日本の自衛戦争であり、アメリカの側にこそ戦争責任があるという主張に対する問題点を指摘している。
本書を読んでみて、この時代に対する知識がいかに欠落しているかを痛感した。大部分の国民は、開戦を熱狂的に支持したし、戦争初期における東條英機の人気は絶大だった。今まで、この時代を知ることを意図的に避けてきた面もあるが、実は大変興味深い時代であるような気がしてきた。
開戦の臨時ニュース(「臨時ニュースを申し上げます、臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部、十二月八日、午前六時発表。帝国陸海軍は、本八日未明、西太平洋において、アメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり。」)と、玉音放送(「朕深ク 世界ノ大勢ト 帝國ノ現状トニ鑑ミ 非常ノ措置ヲ以テ 時局ヲ収拾セムト欲シ・・・堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ・・・」)は、こちらで聞けます。(08/01/14 読了)