シリーズ日本近現代史7 占領と改革 雨宮昭一 岩波新書 ★★★☆☆
著者の専門分野を反映して、政治史的な色彩が強い。政治家のロジックを分析することにはあまり興味を感じないので、4章以降は、理解したとは言い難い。
しかし、前半は意外に面白かった。というのも、今まで、戦前・戦中と戦後との間には断絶があって、戦後は戦前のシステムを全て否定するところから始まったように思っていたからである。
実は、社会の平等化は国家総動員体制(総戦力体制)によってもたらされたし、東条内閣は44年7月には既に総辞職していて、反東条連合によって敗戦が準備されていた。
敗戦について、「遅すぎて多くの人が死んだ」と言われるが、意外なことに連合国側は、日本の降伏は早くとも45年12月以降と予想していた。本土決戦が阻止できたのは、反東条連合の勝利により、敗戦を可能にする政治潮流が主導権を握っていたことが決定的だったという。奄美・琉球諸島を含む南西諸島と小笠原諸島を除き、日本の占領は日本政府を介した間接占領であった。
著者は、米国の占領による「サクセスストーリー史観」を否定し、戦後の改革の多くは、占領があろうとなかろうと敗戦によってもたらされるはずのものであったことを指摘している。(08/02/05 読了)