読書日記 2009年

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地獄の日本兵 飯田進 新潮新書 ★★☆☆☆

ニューギニア島は、豊かな生物多様性を誇り、1000以上の言語が犇めく、地球上に残された最後の秘境である。4000m級の峻険な山々が島を南北に分かち、湿地帯にはマラリアを媒介する蚊や巨大な蛭がウヨウヨいる。
西はマダガスカルから東はイースター島まで拡散していったポリネシア人も、ニューギニア島にはほとんど遺伝的痕跡を残さなかった。新世界において破壊と殺戮の限りを尽くしたヨーロッパ人でさえ、遂にニューギニアには侵入できなかった。ニューギニア人こそは、人類最強なのである。

意外なことに、ニューギニア島のジャングルには、ほとんど食糧となるものがないらしい。従って、ニューギニアでは人口増加率は極めて低く抑えられ、ごく最近まで石器時代さながらの生活を維持してきたわけである。

ここは、かつて戦場であった。食糧の補給を絶たれた状態で、無謀な戦争を戦わなければならなかった日本兵の大部分は、敵の銃弾ではなく、飢えとマラリアによって斃れた。百万を超える数の兵士が、野垂れ死にしたのである。これほどアホらしい話もない。日本兵は、ヒル、ムカデ、蝶、蟻、クモ、ミミズまでも口にしたという。

アジア・太平洋戦争の戦場体験をもつ人は、流石に少なくなった。
著者は1923年生まれである。ニューギニアで敗戦を迎え、戦後はBC級戦犯としてスガモ・プリズンに収容されたという。あまりにも異常な体験は、ごく親しい人にも打ち明けることができないものらしい。
ただやはり、この本は書かれるのが遅すぎたと思う。著者の実体験は少なく、大部分は他の戦記からの引用である。しかも、ニューギニア戦線を体系的にまとめてあるとも言い難い。新書一の薄さを誇る新潮新書だけあって、やはり薄っぺらい。
もう一つ言えば、偉大なるニューギニア人に対して、著者は未だに偏見を拭い去れていないようである。(09/03/20 読了)

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