地図に訊け! 山岡光治 ちくま新書 ★★★☆☆
私は方向感覚は全くないが、地図を眺めるのは好きである。登山に行くときには、必ず2万5千分の1の地形図を携えていく。
本書は、国土地理院で技官として長年働いた著者による、トリビア満載の本である。
かつて、地形図の等高線は、二枚の空中写真を図化機にかけて、立体映像を見ながら手作業で描いていた。今日ではそういう作業もコンピュータ化されているが、地上の大部分は樹木や建物で覆われているため、現在でも完全な自動化はなされていないという。
昭和35年頃までは、技官が現地に赴いて平板測量を行っていたし、その後もしばらくの間は、写真測量の結果を現地で見えた通りに合わせるという「化粧」を施していた。そういうことも次第になくなり、マニュアル化されて職人技が衰退していったのは、やはり寂しいような気がする。
蛇足だが、ちくま新書の題名のセンスはあまり宜しくないと思う。(09/03/25 読了)