「この人、痴漢!」と言われたら 粟野仁雄 中公新書ラクレ ★★★★☆
副題は、「冤罪はある日突然あなたを襲う」。
実は、痴漢に限らず、冤罪事件は現在でも多数起きている。それが、捜査力が低下しているにもかかわらず検挙率ばかりを上げようとする警察、警察と一心同体になり、ひとたび起訴すれば有罪認定に突っ走る検察、更には、検察の言いなりになる裁判官──こういう構造的な問題に起因しているとすれば、我々は一体何を信じて生きていけばいいのだろう。
小市民的に暮らしていれば、警察や裁判所の厄介になることはない、と考えるのは甘い。「話せば分かる」というのも甘い。
では、万一痴漢と間違えられたらどうすればいいか?
まず、絶対に駅事務室に行ってはならない。駅事務室に行った時点で、実はすでに現行犯逮捕(私人逮捕)されている。従って、そのままホームで話し合わなければならない。相手が言い分をまるで聞かず、強引に駅事務室に連れて行こうとする場合は、「間違っていたら虚偽告訴罪で訴える」と切り返せ。それでも、警察がホームに駆けつけて交番に連行されてしまったら、不確かなことは絶対に喋ってはならない。更には、不幸にして逮捕・留置が避けられなかった場合の留置所での過ごし方は、・・・といったことまでが具体的に書かれている。
誠に暗澹とした気分になるが、人生とは全く理不尽なことが起こるものだから、こういう知識は知っておいて損はない。(09/04/28 読了)