アルプスの谷 アルプスの村 新田次郎 新潮文庫 ★★★☆☆
昭和36年、新田次郎49歳の作品。新田次郎の手にかかると、紀行文にも文学の香りが立ち込める。彼が憧れのヨーロッパ・アルプスに見たものは、生まれ故郷である信州の山村に通じる「暗さ」だった。
これはもう半世紀近くも前の話なので、現在のアルプスのイメージとはいささか異なる点もあるかもしれない。しかし、今読んでもほとんど古さを感じないのは驚くべきことで、やはり新田次郎は本質を見抜く透徹した眼を持っていたのだと思う。
坐したる石の巨人、マッターホルンに対峙したとき、私は何を感じるだろうか?(09/06/23 読了)