読書日記 2009年

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天才はなぜ生まれるか 正高信男 ちくま文庫 ★★★☆☆

エジソン、アインシュタイン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アンデルセン、グラハム・ベル、そしてディズニー。「天才」のイメージからは少々外れる人も含まれるが、子供向けの伝記シリーズには必ず登場する、6人の「偉人」たちの物語。
実は彼らには共通点がある。それは、学習障害を持っていたということである。そして彼らは、その障害を克服して偉大な業績を成し遂げたわけではなく、逆に、障害者であればこそ、それを代償するために健常者にはない能力が発揮されたというのである。
読みやすく、なかなか面白かった。

Natureと並んで最も権威のある科学雑誌であるScienceは、エジソンが創刊を企て、グラハム・ベルが育てた、というのはおいしいトリビアである。
それはともかく、著者自身が多動傾向を持っていることを告白しているのが興味深い。そして、著者の友人である茂木健一郎氏もしかりという。確かに、この著者の文章と茂木健一郎の文章は似ているような気がする。2人とも、文章がとめどなく空中から紡ぎ出されてきて、ほとんど推敲する必要もないのだと思う。
そのため、文章は話を聞いているようにさらりと読めるが、時に不正確である。例えば、「岩波新書の青版はほとんどが絶版になっていて、十数点のみが残る」というのは正しくない。しかも、第一期は青版でなく赤版である。(本書にも梅棹忠夫の『知的生活の技術』が登場するのだが、この世代の人たちにはよほど影響が大きかったと見える。)
それから、アインシュタインの相対性理論の解説はかなりイマイチなのだが、さらにここで、小惑星の衝突により2600万年ごとに大量絶滅を周期的に繰り返すという話を、彼のイメージとしてもってきたのは頂けない。
また、「デンマーク語はドイツ語よりもラテン語の面影をとどめている」という表現も、デンマーク語・ドイツ語とラテン語は系統が違うのでおかしい。

著者は最後に、学校教育がこの6人に何の貢献もしなかったことを指摘している。確かに、教育というものは、平均的に質の高い、粒ぞろいの人材を生産するシステムであって、そこから天才は生まれない。
しかし、例えば多動性障害の児童の大部分は天才ではないのであって、だから「ゆとり教育」が良いという話にはならない。ただ、日本にも、giftedな子供たちをサポートするシステムがあるべきだとは思う。(09/07/11 読了)

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