ことばの由来 堀井令以知 岩波新書 ★★★★☆
「けんもほろろ」「へなちょこ」「てんやわんや」など、ものすごく古いわけではない、中世から江戸時代くらいに成立したことばの由来が、丁寧な日本語で解説してある。1600年頃に出版された、日本語をポルトガル語で解説した『日葡辞書』という辞書がある。それを見れば、当時の日本語の使われ方が分かるというのが面白い。
本書に登場するトリビアをいくつか。
- 正月三が日だけ使われる「正月ことば」がある地域がある。例えば、ネズミは「嫁が君」、天狗は「モノモノサン」などという。もし、間違えて普通の言葉を使ってしまったら、「水、水、水」と唱えれば取り消すことができる。
- 今日、明日、明後日の次の日を「しあさって」(四アサッテ)というのは東京中央部と西日本で、東日本では「やのあさって」という。「しあさって」の次の日は、東京中央部では「やのあさって」だが、西日本では「ごあさって」(五アサッテ)という。
- 「虹」と「ウナギ」は語源が同じで、どちらも「主」(ぬし)ということばと関係がある。南西諸島では、「ニジ」は青大将のことをさす。
- へちまは、もともと「イトウリ」(糸瓜)といった。それが、上の一文字が略されてトウリになった。「と」はいろは歌の「へ」と「ち」の間にあるので、「ヘとチの間」で「へちま」になった。
- 「くしゃみ」とは「クソハメ」(糞食め)であり、「糞食らえ」という意味である。もとは呪いのことばであり、英語でくしゃみをした人に"Bless you!"と言うのと同じである。
(12/02/15読了)