女子校育ち 辛酸なめ子 ちくまプリマー文庫 ★★★★☆
こいつは面白い!東京近郊の女子校の比較生態学。このご時世に、女子校とかいうディープなカルチャーが生き延びていることは驚くべきことである。実際のところ、女子校には外部から見ると奇妙な伝統的儀式が、長年にわたって受け継がれてきているのだ(豊島岡の「運針」とか)。それにしても、今どき、お抱えの庭師がいるとか、家に自家用のヘリがあるとか、そんな人って実在するのだろうか?
「女子校タイプ別図鑑」というのが、思わず笑ってしまう。いかにもステレオタイプな分類であるにもかかわらず、知り合いの女子校出身者のキャラを思い浮かべると妙に納得する。いわく、
- 性超越系:桜蔭、慶應女子、女子学院、お茶大附属、フェリス etc.
- 努力型秀才系:豊島岡 etc.
- モテ系:東洋英和、品川女子、東京女学館 etc.
- 良妻賢母系:大妻、共立、跡見 etc.
- 温室・夢見がち乙女系:ミッション系小規模女子校(よく知らない)
- お嬢様系:雙葉、白百合、清泉 etc.
- 深窓お嬢様系:学習院、聖心、田園調布雙葉 etc.
だって。まぁ、知り合いのほとんどは「性超越系」に偏在しているのだが・・・。
もちろん実際には色んな人がいるに決まっているのだが、こういう本は、それを認めた上で、敢えてそのステレオタイプさを笑ってみるが正しい読み方である。とはいえ、中高の多感な時期を、外界から隔絶された女だけの社会で過ごすことは、人格形成に少なからぬ影響を与えるのもまた事実だろう。いずれにせよ、女子校育ちはマイノリティなのだ。なるほど、地球上の大部分の社会は男社会なのだから、女だけの世界で処世術を身につけた女子校育ちにとっては、生きにくい世の中なのかもしれない。
ただ、自分は共学育ちだけど、そこには、ここに登場するような(女子校育ちのアンチ・テーゼとしての)共学系女子はいなかった・・・ような気がするのだが、私が知らないだけなのか、私の出身校が特殊すぎたのだろうか?(12/06/01読了)