読書日記 2011年

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物語 韓国史 金両基 中公新書 ★★☆☆☆

紀元前2333年、白頭山に天孫が降臨するという「檀君神話」から延々と説き起こし、8世紀に新羅が滅亡するまでの記述が全体の4分の3を占め、1910年の韓日併合(本書にはこう記述されている)以降の歴史はわずか6頁に押し込まれているという、ビックリするほどバランスの悪い朝鮮史の本。

神話と史実を一緒くたにして記述するのはいかがなものかと思う。とはいえ、『三國史記』によれば、高句麗の建国が紀元前37年、百済の建国が紀元前18年、新羅の建国が紀元前56年ということになっているから、日本よりもだいぶ歴史が古い。しかし逆にいえば、高麗王朝と朝鮮王朝(李氏朝鮮)の千年間には、語るべきダイナミックな歴史はないということなのかもしれない。また、済州島(耽羅)についての記載がないのも不満である。全体として、自民族中心主義的な史観に貫かれているのだが、これはこれで興味深い。

高句麗・百済・新羅はセットにして語られるが、高句麗は遼東半島までをも含む広大な版図を治めていた。そのため、高句麗を中国の歴史の一部とみなす立場もあり、韓中両国の間で論争になっているらしい。隣国の歴史を客観的に語ることは、どの国にとっても難しい。(11/06/30読了)

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