読書日記 2011年

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還るべき場所 笹本稜平 文春文庫 ★★★★☆

時代が変われば、山岳小説も変わる。現在では、素人登山家が8000m峰の頂に立つことは、必ずしも不可能ではない。エベレスト、チョー・オユー、ブロードピークといった、そんなに難しくない8000m峰では、素人登山家の夢を叶えてくれる公募登山が行われている。この小説の舞台は、そんな公募登山隊である。でも、主人公である翔平の還るべき場所は──世界で最も困難な山、地球上でいちばん大きなとんがり帽子、K2だ。

公募登山の様子が実にリアルに描かれていて、非常に参考になる。これはもちろんフィクションであるけれども、山頂に至るルートは本物であろう。著者がどのようにして、これだけの情報を収集したのかが知りたい。それから、還暦を過ぎてから山登りを始めた野心的な実業家、神津の台詞が深い。昔も今も、8000m峰の頂に立つことは、人生を賭ける価値のあることなのだ。私も、K2とは言わないまでも、いつかエベレストの頂に立ってみたいものだと思う。でも、その前にまだ、登るべき山がたくさんあるなぁ。(11/10/21読了)

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