読書日記 2011年

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エベレスト登頂請負い業 村口德行 山と渓谷社 ★★★★☆

地球最高所であるエベレストの頂は、いくら時代が変わっても、人類にとって特別の場所であり続ける。超高所での撮影を職業とする著者は、日本人として最多となる6回、エベレストの頂に立っている。野口健や三浦雄一郎を案内したこともある。

セオリーによれば、エベレストの理想的な登り方は、

1日目 BC(5350m)→ C2(6450m)
2日目 C2 → C3(7300m)
3日目 C3 → サウス・コル(7986m)
4日目 サウス・コル → エベレスト頂上 → サウス・コル
5日目 サウス・コル → C2
6日目 C2 → BC

という5泊6日の行程である。もちろん、高度順応には時間がかかるので、エベレストに登頂するためには普通3ヶ月を必要とする。脳浮腫を発症することもあるから、やっぱり高所は怖いのだ。登頂日は、プレ・モンスーンの5月。チャンスは中旬と下旬の2回あるというけれども、サウス・コルからアタックをかけたらワンチャンスだ。判断を誤れば、命を落とすことになる。

著者曰く、ある程度の体力と技術を持ち合わせている健康な人ならば、エベレストに登ることは十分可能だという。技術もさることながら、とにかく、体力勝負なのだ。サウス・コルに午後遅くに到着して、水を作ったり食事の準備をしているうちに、あっという間に時間は過ぎる。そして、ほとんど休む間もなく、その日の夜10時には出発しなければならない。丸2日間、ぶっ続けで動き続けられるだけの体力が必要である。

サウス・コルを出発すると、8500m付近、バルコニーと呼ばれているあたりで夜明けを迎える。緊張を強いられる雪の急斜面を登り続け、やっと南峰に到着すると、切り立った稜線と頂上までの絶望的な距離に恐怖を覚える。南峰から2時間、ヒラリー・ステップと呼ばれるちょっとヤバい場所を苦労して越えれば、あとは天国へと続く真っ白い稜線があるだけだ・・・。

エベレスト登頂を実現させるためには、たくさんのことを犠牲にしなければならない。人生の残り時間を考えたとき、体力と使える時間とのトレード・オフになる。現在でもアドベンチャーガイズ社が毎年エベレスト登頂ツアーを行っているようだが、あと20年もすれば、エベレスト登頂はさらにメジャーになるだろう。その日が来るまで、せいぜい身体を鍛えておくとしよう。(11/10/27読了)

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