ドキュメント 高校中退 青砥恭 ちくま新書 ★★★★☆
最底辺高校の恐るべき実態。ほとんどの生徒が九九を言うことができず、55の次の数がなんだか分からない生徒もいるという。生徒たちは授業料を払うことができずに、歯が抜け落ちるように高校をやめていく。親も、教育の大切さを知らないのだ。底辺校では、中退率は3割にも及ぶ。しかし、高校中退では満足な仕事にありつくことができないから、ますます貧困にあえぐことになる。こうして貧困は再生産されていく。ひとたび負のスパイラルにはまり込むと、どんなに頑張っても抜け出すことができないのが、現代の日本社会だ。
「自己責任」という言葉が幅を利かせているが、子供の貧困は自己責任ではない。政府は、同じコストをかけるなら、老人よりも子供に投資すべきである。しかも、少子化社会なのだから、トータルでかかるコストも少ないはずだ。にもかかわらず、老人の福祉が優先されるのは、高齢化社会における民主主義の矛盾であろう。そしてまた、富裕層もいつ足下を掬われるか分からないという不気味さがあるから、既得権益を守ることに汲々としていて、貧困層に構っている余裕がない。こんなことを続けていたら、この国は滅びるであろう。(12/05/31読了 13/02/10更新)