ガラパゴス化する日本 吉川尚宏 講談社現代新書 ★★☆☆☆
2004年に米国から帰国したときに、日本の携帯電話があまりにも独自進化を遂げていたので驚嘆したものである。しかし、「ガラパゴス携帯」は、今や滅びゆくものの代名詞となってしまった。
今後日本はますます高齢化が進行し、市場は縮小する一方なのだから、脱ガラパゴス化しなければ日本企業は生き残っていくことはできない。だから、企業はガラパゴス化を免れるために最大限の努力をするだろう。しかし、日本人と日本という国が脱ガラパゴス化しなければならない理由は何だろうか?外国に行ってみれば、ほとんどあらゆる分野において日本の方が優れていることが分かる。日本が一番快適なのだから、日本の若者が日本から出たがらないのは自明の理である。第2章は「なぜガラパゴス化はよくないのか?」と銘打ってあるのに、その章を何度読み返してみても、日本人がガラパゴス化してはいけない理由は書かれていない。
結局この本は、経済のことしか考えていないのだ。日本経済が飛ぶ鳥を落とす勢いだった1980年代を懐かしむ人がいるが、あれが良い時代だったとは到底思えない。日本はユーラシア大陸の東の果てに位置しているのだから、どう転んだって、世界の辺境なのだ。日本は、一部のコアなマニアから熱烈に愛される小さな国として、緩やかに老いていくのが良い。ガラパゴス化万歳!(12/12/23読了 13/02/10更新)