読書日記 2014年

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知の逆転 吉成真由美 他 NHK出版新書 ★★★☆☆

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、そしてジェームズ・ワトソンという科学界のスーパースターに対するインタビュー集。とにかく、これだけの超大御所に対して、インタビューを実施できたことが凄い。彼らから意味のあるコメントを引き出すために、インタビュアーである吉成さんは相当な下準備をして臨んだと思う。

ただ、必ずしもそれが成功しているとは言えない部分もある。ダイアモンド、チョムスキー、サックス、ワトソンに関しては、既にある程度著作を読んだことがあり、やや物足りなく感じてしまった。

「宗教を持っているか」「人生の意味は何か」という質問に対するダイアモンドの返答が秀逸である:

神がいるかどうかについては、宇宙人がいるかどうかや緑の妖精がいるかどうかについて語らないのと同様、議論しないことにしています。
「人生の意味」というものを問うことに、私自身は全く何の意味も見出せません。人生というのは、星や岩や炭素原子と同じように、ただそこに存在するというだけのことであって、意味というものは持ち合わせていない。

基本的に6人とも、他人の宗教は否定しないが、自らは宗教をもたないという点で共通している。私自身も、人類が宗教を持つという現象には非常に興味があるが、自分自身の人生に宗教は不要だと思っている。

人工知能の開拓者であるマービン・ミンスキーは、この30年間、ロボット工学は何も進歩していないという。AIBOの存在が端的に示しているように、エンターテイメント化へと向かってしまい、福島の原発にロボットを送り込んで作業させるというような、実用的なことは何一つできないのだ。

トム・レイトンのことは知らなかった。インターネット上最大の会社は、googleでもamazonでもなく、レイトンが立ち上げたアカマイ社(akamaiはハワイ語で「知性」の意味)である。日々インターネットを流れる情報の15~30%は、アカマイ社のサーバを経由しているという。

こんな短いインタビューでは、彼らの巨大なる知性のごく片鱗を垣間見たに過ぎないだろう。これを読んでいる暇があったら、彼らの著作をじっくりと読み込んだほうがいいのかもしれない。本書はしかし、そのための手軽なブックガイドにもなっている。(14/01/18読了 14/10/13更新)

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