読書日記 2014年

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官能教育 植島啓司 幻冬舎新書 ★★★☆☆

「官能教育」というタイトルは、同じ題名の別の著作から来ている。19世紀のヴィクトリア朝は、性が厳しく抑圧された時代だった。ピーター・ゲイという歴史学者が、ヴィクトリア朝に生きたある女性の奔放な性愛の記録を見つけ出し、それを『官能教育』という著作の中で分析してみせた。本書の内容は、一言でいえば「不倫のすゝめ」である。著者は宗教人類学者で、人類学と文学の観点から性愛について縦横無尽に語っている。話題は多岐にわたり、意外に面白かった。

実際のところ、ヒトという種にとって、一夫一妻制はあまり自然なシステムではない。西欧との接触以前は、ヒト社会の80%が一夫多妻(または一妻多夫)制であったという。実は、一夫多妻制は女性にとってメリットのあるシステムである。上位の男性が女性を独占してしまうため、中位か下位の男性にとっては災難でしかないのだ。それに対して単婚制は、男性にとっての平等主義なのである。ところで、多夫多妻制(乱婚制)のヒト社会というのは存在するのだろうか?

恋愛は、不可逆的だ。「恋愛の中に『恋愛』そのものを滅ぼし否定する要素が含まれている」というのは、言い得て妙だと思う。(14/02/18読了 14/10/13更新)

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