読書日記 2014年

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<香り>はなぜ脳に効くのか 塩田清二 NHK出版新書 ★★★☆☆

「アロマセラピー」というとやや胡散臭い響きがあるが、本書は医療としてのメディカル・アロマセラピーについて科学的に解説した本である。エビデンスがきちんと示されており、引用文献もあって勉強になった。植物の芳香成分を抽出した精油は、二通りの経路で人体に作用する。一つは、心地よい香りがリラクゼーションの効果を示し、もう一つは、血中に取り込まれて薬理効果を発揮する。

アルツハイマーの初期には嗅覚異常が見られるが、精油は認知機能を改善する効果がある。嗅神経細胞は脳の中で例外的に再生が起きるところなので、匂いの刺激が神経を活性化して再生を促すのかもしれない。また、精油は抗がん作用をもつとともに、末期がんのつらい疼痛を緩和する。ラットを使った実験では、グレープフルーツの精油が食欲を抑え、ダイエット効果をもつことも示されている。このように、代替医療として有効なアロマセラピーであるが、保険適用されていないこともあって、実際に導入している医療機関は今のところあまり多くはないようである。(14/05/03読了 14/10/13更新)

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