世界を変えた10冊の本 池上彰 文春文庫 ★★☆☆☆
池上さんの語り口は、テレビの解説そのままの分かり易さだが、さすがにこれでは物足りない。大風呂敷を広げた割にはあまりにも内容が希薄で、まったく読みでがない。これを読んで、「教養」などと言われてもなぁ・・・。
本書に登場する10冊とは、
1.『アンネの日記』アンネ・フランク
2.『聖書』
3.『コーラン』
4.『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス・ウェーバー
5.『資本論』カール・マルクス
6.『イスラーム原理主義の「道しるべ」』サイイド・クトゥプ
7.『沈黙の春』レイチェル・カーソン
8.『種の起源』チャールズ・ダーウィン
9.『雇用、利子および貨幣の一般理論』ジョン・M・ケインズ
10.『資本主義と自由』ミルトン・フリードマン
という誠にオーソドックスな(悪く言えば、ベタな)ラインナップである。オッという感じなのは『道しるべ』くらいだろうか。
聖書やコーランに関しては、様々なレベルの解説書が無数にあるから、そちらを読むほうがずっと有益だろう。
池上さんが『種の起源』について論じるのは相当に無理がある。間違ったことは書かれていないが、この章だけ浮いている感じがする。最近(といっても2009年)に出版された渡辺政隆訳は読んでみようと思った。
また、『種の起源』を含めるなら、ユークリッドの『原論』やニュートンの『プリンキピア』(自然哲学の数学的諸原理)はなぜ含まれないのか、などと突っ込みたくなる。
池上さんのバックグラウンドは経済学であり、一方、私は経済学については丸っきり無知であるため、4、5、9、10章は勉強になった。しかしそれなら、『世界経済を変えた10冊の本』について、もっと詳しく解説してくれたら有益だったかもしれない。(15/09/18読了 15/09/21更新)