日本の風俗嬢 中村淳彦 新潮新書 ★★★☆☆
本書によれば、日本には1万3千店もの風俗店があり、そこで働く女性は30万人以上にも及ぶという。日本全国にあるセブン・イレブンの店舗数が1万6千というから、これは実に驚くべき数である。
性風俗産業は、現在では完全な供給過剰、買い手市場の状態にある。今や、貧困層の女性が最後の砦としてすがりつく場所ではなく、もはやセーフティーネットとしては機能しなくなっている。かつてのように、腹をくくりさえすれば誰にでもできるというものではなくなり、選ばれた女性しか就けない特殊な職業になっているというのだ。
一方、ビジネスとしても非常に厳しい。様々な法的規制により、誰もが新規参入できる業態ではほとんど儲けを出すことができない一方、既得権益をもつ店の一人勝ちという構図だ。違法店は常に摘発の危険性と隣り合わせ、暴力団という厄介な存在もある。アウトローが跋扈する世界だ。
これほどの巨大産業でありながら、この世界はまるで存在しないかのように、きちんと語られることはないし、誰も語りたがらない。その「後ろめたさ」こそが、この世界の大きな問題点であろう。性風俗産業は決してなくならない。それを前提に、セックス・ワーカーを一つの職業として認めることが必要だ、と提言している。風俗界の「ナイチンゲール」が求められているのだ。(15/10/31読了 16/01/31更新)