読書日記 2015年

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グレートトラバース 日本百名山ひと筆書き 田中陽希 NHK出版 ★★★★☆

これを読むと、改めて、山に登りたいという気持ちが沸々と湧いてくる。NHK BSプレミアムで放送されたものだが、私はそれを見ることができないため、こんな楽しいチャレンジをやっていたなんてついぞ知らなかった。
第2弾の「日本二百名山ひと筆書き」は、つい最近(2016年1月1日)、無事にゴールしたようだ。

百名山早登りの記録はたびたび更新されており、その辺の話は、重廣恒夫『エベレストから百名山へ』、クレイグ・マクラクラン『ニッポン百名山よじ登り』といった本にも書かれている。
現在の最短記録は、山岳ガイドの藤川健さんが2014年に打ち立てたに33日(!)だそうだ。(ちなみにこの方、御嶽噴火の4日前に御嶽に登っている。)

それはもちろん偉大な記録に違いないが、しかし、林道が山の奥深くまで通じている現代日本において、最短コースでただピークを踏みに行くという行為になんの意味があるのだろうと思っていた。それで、「移動も徒歩で百名山全山連続踏破(離島以外)」というのを、実は昔から、密かに心に抱いていたのだ。もちろん、実践はしていない。

実際のところ、これは実に壮大なチャレンジである。総移動距離、なんと7800km。2014年4月1日から10月26日まで、209日間を要したという。
日本百名山というのはうまくできていて、最南端(屋久島・宮之浦岳)と最北端(利尻島・利尻岳)がどちらも離島にある。このチャレンジがなんといっても凄いのは、海の移動もすべて人力(シーカヤック)で行っていることだ。
アルプスと北海道の山が鬼門である。1年のほとんどが雪で覆われているからだ。4月に九州を出発して、6月に南→中央→北アルプス、9〜10月に北海道というのは、実によく練られている。北上する場合、それしか解はないだろう。
一番孤立した百名山は中国地方の大山で、九州の久住山から480km、四国の石鎚山まで250kmもある。そして、北海道がでかい。羅臼岳から利尻島までも420kmある。そこも、ひたすら歩き続けるのだ。

ちなみに、日本百名山全山を徒歩でつないだのは、田中陽希さんがはじめてではない。本書にも登場するが、関根孝二さんという人が南下のコースですでに達成している。ただし、海の移動には船を使っているが。
調べてみると、ここにその記録があった。2007年から2008年にかけて、212日間で達成している。驚くべきはそのときの年齢で、なんと52歳のときのチャレンジだという。しかも、ほとんど野宿だし、田中さんが高熱や怪我で3週間以上もロスしているのに対し、関根さんは全部で5日しか休んでいないのだ(そのうち1日は免許の更新)!
全く話題にならなかったが、実は、こっちのほうが凄いんじゃないだろうか・・・。というか、個人的には、こういう風にコッソリ凄いことをする人のほうが好きなのだ。 この人、40歳のときには、野宿しながら47日間で日本列島をマラソンで縦走したらしいし、一体何者なのだろうか?(15/10/22読了 16/01/31更新)

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