最貧困女子 鈴木大介 幻冬舎新書 ★★★☆☆
貧乏と貧困は違う。海外を旅していると、物質的には貧しくても楽しそうに暮らしている人たちもいるし、明らかにヤバイ感じのスラム的な町もある。
現代日本においても、地方都市であれば、月収10万円でも地元の友人と助け合いながら存外ハッピーに暮らしている「プア充女子」もいる。
本書のいう「最貧困女子」とは、ただの「貧困女子」ではない。知的障害などの問題を抱えているため、家族や友人とのつながりもなく、しかも生活保護などの社会保障制度にアクセスすることもできない──誰からも相手にされない、「可視化されていない貧困層」が存在するのだという。「普通の」女性がセックスワークの世界に参入してきている昨今、彼女たちはセックスワークの最底辺に埋没されられている。確かにこれは、誰も関わりたくない厄介な問題かもしれない。
貧困は、低収入に加えて、三つの無縁──「家族の無縁」「地域の無縁」「制度の無縁」──によって引き起こされるという。だが、本書のインタビューを読む限り、何より問題なのは親である。その壮絶な虐待体験に心が痛む。
この国は老人にばかりカネを使っているけれども、そういう子供たちをなんとかすることのほうがずっと大事なのではないか。(16/02/18読了 16/02/21更新)