イスラム飲酒紀行 高野秀行 講談社文庫 ★★★☆☆
これまでに何度かイスラム圏を訪れたことがあるが、そういえば酒が飲めなくて困ったことはない。インドネシアやウイグルでは、酒はそこら辺にいくらでもあった。モロッコでは飲めなかったが、山から下りてきたときも、甘いミントティーを飲んでいればそれで十分ハッピーだった。
けれども、この地球上には、「酒飲み」と呼ばれる人種がいるらしい。私は、実はそれほど酒が好きではないことに最近気がついた。よって、イスラム圏で酒を求めて右往左往する筆者の気持ちはサッパリ分からない。
もっとアンダーグラウンドなやつを期待したが、予想よりも健全で、愉快な紀行文だった。
著者のことはよく知らなかったが、アジア〜アフリカの辺境をディープに旅しているようなので、他の著書も読んでみようと思った。
こうしてみると、まだまだ未踏の地がたくさんある。本書で気になったのは、バングラディシュの「ハッピーランド」、チッタゴン丘陵だ。そこにはマルマ人というビルマ系の先住民族が住んでいるらしい。
本書にはまた、つい数年前まで治安が保たれていたシリアの様子が出てくる。そこでは、アサド政権による独裁下で言論の自由はないものの、イスラム教徒とキリスト教徒が平和に共存していた。一体どうしてこうなってしまったのだろう。(16/05/13読了 16/05/17更新)