読書日記 2017年

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ビッグデータと人工知能 西垣通 中公新書 ★★★☆☆

このままのペースでコンピュータの性能が指数的に向上していけば、2045年という近未来に、シンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるという。
レイ・カーツワイルの『ポスト・ヒューマン誕生』によれば、脳の「リバース・エンジニアリング」や、さらには「マインド・アップローディング」によって、人類は不死を手に入れる──。
実に馬鹿馬鹿しい。21世紀のこのご時世に、バラ色の未来像を描くなど、御目出度いにも程がある。
実は、カーツワイルが『ポスト・ヒューマン誕生』を記したのは2005年で、もう12年も前のことだ。当時はさほど注目されなかったのだが、ここ数年のディープ・ラーニングのブームによりにわかに脚光を浴びるようになったということらしい。
逆に、コンピュータが人類の知性を越えれば、われわれには制御不能となり、人間がコンピュータに隷属する社会が訪れるという悲観論もある。こちらのほうがいくぶんマシな言説だが、いずれにせよSFの世界である。

で、本書は、そんなアホなことは起こりませんよ、という。
なぜならば、生物と機械は違うから。知性は脳だけに宿っているわけでなく、身体から切り離しては存在しえない。サルにピアニストの脳を移植しても、サルがピアノを弾き始める訳ではない。
というようなことを、サイバネティクスとかオートポイエーシスといった20世紀的な衒学的タームを鏤めつつ説いている。

そりゃ、そうだろう。至極常識的な見解だと思う。
そもそもシンギュラリティ仮説なんていう荒唐無稽なシロモノを信じているナイーヴな人が存在するのか、と思うが、欧米ではそれなりに人気があるようだ。ただ、それをユダヤ=キリストの一神教的価値観に帰するのは、いささか短絡的ではないだろうか。

最終章では、ビッグデータと人工知能に加えて、集合知を活用せよ、と説いている。
全体的に言って、著者の見解には同意するものの、意外性も感じなかった。(17/05/10読了 17/05/12更新)

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