ワイン生活 田崎真也 新潮文庫 ★★★★☆
この本を読んで、ワインに対する認識が変わった。
ワインの入門書というものは、なぜか、妙に鼻に付くものが多い。しかしこの本は、ワインを純粋に楽しんでみようという気にさせてくれる。薄っぺらいウンチクとか、キザな台詞とかは、むしろワインを貶めるものでしかない。
ワインは、単品で飲むというよりは、料理との相乗効果を楽しむもの。なるほど、いわゆるワイン通の人が推す赤ワインの美味しさがさっぱり分からなかったが、その渋味も、肉料理と一緒に頂けば互いに引き立て合うのだ。白ワインはレモン、赤ワインはスパイス。だからそれぞれ、魚と肉に合う。
当たり前のことだけど、要は、自分が美味しく頂ければよい──中途半端なワイン通ではなく、世界一になった人がこういうことを言ってくれることが大事なのだ。頂点を極めた人ならではの器の大きさを感じる。
ソムリエは、お客様に楽しんでもらうのが仕事なのだから、どんどん利用するべきだ。その日の料理に一番合うワインを選んでもらえばいい。
美味しいものを食べたいという欲求は誰にでもあるものだ。興味があれば、知識は自然についてくるだろう。
ワインの裾野を広げる上で、この人の存在はとても大きい。(17/06/23読了 17/11/07更新)