読書日記 2017年

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コーカサスを知るための60章 北川誠一、前田弘毅、廣瀬陽子、吉村貴之 明石書店 ★★★★☆

カスピ海と黒海に挟まれたコーカサスは、無数の銀河からなる一つの宇宙である。
コーカサスの国々といえば、言うまでもなくアゼルバイジャン、アルメニア、グルジアである。しかしそれは、コーカサスの南半分に過ぎない。
北コーカサスには、ダゲスタン、チェチェン、イングーシ、アラニア・北オセチア、カバルダ・バルカル、カラチャイ・チュルケス、アディゲという、ロシア連邦内の7つの共和国がひしめいている。
南コーカサスにおいては、アゼルバイジャン領内のナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの主権が及んでおらず、事実上のアルメニアの飛び地のようになっている。一方アゼルバイジャンは、アルメニアを挟んでナヒチェバンという飛び地をもつ。また、グルジア領内にも、南オセチアとアブハジアというグルジアの主権が及んでいない2つの共和国がある。
このように、コーカサスは政治的に非常に錯綜した状況にある。

コーカサスの最大の魅力は、その多様性である。コーカサスでは50もの言語が話され、「言語の山」と呼ばれている。
話者数700万人のアゼルバイジャン語を筆頭に、アルメニア語(400万人)、グルジア語(360万人)が大きな言語で、ついでチェチェン語(70万人)、アヴァル語(60万人)、チェルケス語(57万人)と続く。
ことにダゲスタンでは、土着系のコーカサス諸語を中心に30もの言語がひしめき合っている。ダゲスタン共和国の公用語は、ロシア語に加え、アグール語、アヴァル語、アゼルバイジャン語、チェチェン語、ダルギン語、クムク語、レズギ語、ラク語、ノガイ語、ルトゥル語、タバサラン語、ツァフル語、タート語と14言語もある。

本書は、地理、歴史、言語、政治、経済、文化など多方面からコーカサスについて解説してあり、大変充実している。
特に北コーカサスについての解説は、類書がないように思う。早くこの地に政治的安定が訪れ、自由に旅することができる日が来ることを願う。
また、この「エリア・スタディーズ」というシリーズがとても面白いことが分かったので、今後、訪れる土地ごとに読んでいこうと思う。(17/08/31読了 17/12/24更新)

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