辺境・近境 村上春樹 新調文庫 ★★★☆☆
村上春樹はあまり旅人のイメージはないが、なるほどノモンハン事件(ハルハ河戦争)の起きた中蒙国境付近は間違いなく、圧倒的に辺境なのである。ハルハ河を渡れば目と鼻の先なのに、中国側とモンゴル側の両側から攻めるというのも酔狂で良い。
ハルキ節全開の、いささか村上さんにはそぐわないメキシコ紀行も楽しい。
でも、たとえ辺境というものが消滅してしまったとしても、訪れる場所自体に魅力がなくては紀行文は成立しえないだろう。
おそろしくboringなアメリカ大陸横断─それにしても、地球上でこれほど行きたいと思えない場所も珍しい─、そして西宮から神戸までの「散歩」で本書が終わるというのは、いかにも尻すぼみの感が否めない。(17/11/05読了 17/11/05更新)