知床・北方四島─流氷が育む自然遺産 大泰司紀之・本間浩昭 岩波新書 ★★☆☆☆
世界自然遺産・知床。これを、北方四島とウルップ島を含む範囲にまで拡張し、日露で共同管理せよ──この提言には100%賛同する。
周知のように、北方四島は戦後、ソ連によって実効支配された。しかし、日本の支配が及ばなかったことが幸いして、ソ連の最果てにある北方四島は、開発を免れてきた。択捉島とウルップ島の間には、野生のラッコの楽園があるという。
しかしここへ来て、覇権主義を強めつつあるロシアは、北方四島にも開発の触手を伸ばしてきた。いま、北方四島の豊かな自然は、崩れかけつつある。
北方四島はもちろんのこと、その先に続く千島列島も、近くて遠い外国である。
アクセスは容易ではない。千島列島には美しい富士山型の成層火山がいくつもあり、いつか訪れてみたい憧れの地なのだ。(実は北方四島も、サハリン経由で行けるらしい。)
それで、大いに期待しながら本書を繙いてみたのだが、3つの意味で残念だった。
第一に、北方四島といいつつ、その周辺の海の話ばかりで、島そのものの紹介がほとんどない。北方四島とはどのようなところなのか。その景観や、島での人々の暮らしなどを知りたかった。
第二に、文章が流れが良くない。難しいことを言っているわけでもないのに、読んでもちっとも頭に入ってこない。
第三に、折角のカラー版なのに、写真が美しくない。なぜ掲載したのか、意味不明の写真も多い。(18/03/02読了 18/03/07更新)